バイデン大統領も早速、この点に関連して「最高裁が過去の判例を覆すとすれば、フロリダ州はじめ保守系の各州が再び同性婚禁止措置を打ち出すことになる。そんなことが許されるのか」と述べ、懸念を表明した。
このため、民主党ベテラン・ストラテジストたちの間では、中絶問題に続いて同性愛問題についても、最高裁判断が出る前に今のうちから計画的に世論喚起の行動を起こすとともに、中間選挙に向けて穏健派のみならず、有権者全体の20%近くを占めると言われる「無党派層」の票の掘り起こしに全力をあげるべきだとの指摘が出始めている。
共和党内からも文化戦争激化への動き
一方、共和党側でも、24年大統領選での政権奪回目指し、独自の文化戦争〝宣戦布告〟の動きも出ている。
その旗振り役になっているのが、自ら出馬意欲を見せているロン・デサンティス・フロリダ州知事(共和)だ。
デサンティス知事は去る4日、記者会見で、連邦最高裁判断に従わず中絶を選択する女性や手術を行っている婦人科医の刑事告発を拒否する同州タンパ地区のアンドリュー・ウォーレン検察官について、記者会見で「知事権限により職務執行停止にした」と突然発表、州内に衝撃が走った。その上で「検察官が中絶禁止の州法を無視することは許しがたい怠慢行為だ」と厳しく批判した。
これに対し、ウォーレン氏は、若手民主党のホープとして人気度が高く、任期4年の州検察として過去2度の選挙で選出されてきた経緯があるだけに、今回の知事決定について多くの地元有権者の間からも猛烈な反対の声が挙がっている。
同氏はさらに、中絶問題については、過去50年近くにわたり連邦最高裁が容認してきた「女性の生来の権利」であり、今回、保守派で固める最高裁がこれを覆す判断を下した後も、フロリダ以外の各州において「数百人以上」の検察官たちが刑事告発を拒否していることを明らかにした。
デサンティス知事は、思想・心情的にトランプ氏と最も近く、コロナ感染の全国拡大に伴い各州でマスク着用や外出規制が実施された際にも、これを無視してマイアミビーチを海水着姿で散歩するなど、破天荒な振る舞いでマスコミを賑わせてきた。
同性愛結婚、公立学校における人種間融合措置などについても、早くから反対運動を展開するなど、〝右翼の闘士〟としても知られており、「共和党は今後、選挙においても、民主党を追い詰めるために、徹底した文化戦争を仕掛けるべきだ」と訴えている。
同知事は、今年11月の州知事選で再選を目指すほか、トランプ氏と並び24年大統領選の有力共和党候補と目されており、今後、与野党間の「カルチャーウォー」がし烈化していくことは避けられない見通しだ。