投票まで3カ月を切った注目の米中間選挙は、物価高騰など経済問題のほかに、銃砲規制、女性の人工妊娠中絶権、信教の自由などをめぐる、与野党間の激しい「カルチャーウォー」(文化戦争)に発展してきた。
トランプが焚き付けたが、今や風向きは逆
「今こそ、反撃のチャンスだ」――。社会制度や歴史認識などの問題でどちらかと言えば防戦気味だった米民主党側が、共和党相手に反転攻勢の気勢を上げ始めている。そのきっかけになったのが、銃規制、中絶権問題に関連する最近の相次ぐ最高裁判断にほかならない。
もともと、米社会の亀裂を深める「カルチャーウォー」に火をつけたのは、ドナルド・トランプ前大統領だった。
トランプ氏は、ここ数年来、各州で人種差別の象徴である南北戦争当時の南軍の将軍像を撤去したり、中西部サウスダコタ州にある有名な歴代大統領の銅像・碑のうち奴隷制と結びつく人物の取り壊しを求めるなどの進歩派の動きに猛反発。「歴史の否定だ」として、自らのツイッターなどを通じ、有権者に「文化戦争」を大々的に訴えてきた。
その結果、再選目指した前回大統領選では、敗れたとはいえ、保守層を中心に全米で7000万を超す得票につながった。
しかし、最近、銃規制、中絶問題がにわかにクローズアップされるにつれ、今度は共和党保守派が逆に防戦を強いられつつある。
世論調査で定評のあるマンモス大学が、「有権者にとっての最重要問題」について実施した最新調査結果によると、1位が「経済政策」(24%)だったが、2位には「中絶問題」と「銃砲規制」(いずれも17%)が同数でつけ、国民の関心が次第に高まりつつあることを示した。
このうち、全米メディアで大きな話題となったのが、去る8月2日、カンザス州で行われた中絶の是非を直接問う住民投票だった。