2024年12月12日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年8月22日

 ペロシ米下院議長の訪台への抗議のために、中国は台湾周辺海域に6つの演習地域を設定し、実弾演習を行った。またミサイルを台湾周辺海域に向けて発射した。そのうち5発は、日本の排他的経済水域(EEZ)に到達した。

 これらの演習地域は台湾の主要商業港の近くに設定され、中国がいざというときには台湾を海上封鎖できることを示すものになっている。台湾と中国本土の中間線を超えての軍事船舶の航行と軍用機の飛行があり、台湾側は台湾侵攻の模擬実験と非難している。

 当然の非難であるが、今次演習は、台湾に上陸作戦を行う事前準備としての演習と言うよりは、台湾を海上封鎖するための演習であると考えられる。その意味で、上記記事の筆者の見解、台湾侵攻よりも台湾封鎖を念頭においているとの見解に賛成である。

米中間の軍事バランスも変わりつつある

 台湾としては、中国が台湾上陸作戦を試みる可能性は念頭におくべきであるが、主たる脅威は封鎖の危険であると考えて準備するのが良いのではないか。例えば、上陸阻止には、海浜での対人地雷や戦車などが有用であろうが、封鎖を打ち破るのには、地対艦ミサイルなどが有用であろう。

 1996年の台湾海峡危機の時には、中国がミサイルを台湾近くに打ち込んで、台湾を脅したが、クリントン大統領が台湾海峡に空母2隻(ニミッツとインデペンデンス)を派遣し、中国はどうしようもなく、後退した。これは、米ソのキューバ危機の際に、ロシアが後退を余儀なくされた後、核戦力の増強に力を入れたことを想起させた。

 中国にとって、これがロシアにとってのキューバ危機と同じ効果を及ぼさないか懸念されたが、この後、中国は、核も含め軍拡をずっと続け、米中間の軍事バランスも、中国有利に変わってきている。

 今回の演習は4日間であったが、このような演習は終わらせるべきであると考えている。演習を常態化させ、他国の船舶や航空機の公海使用を事実上妨げることは、海洋法に違反することになると思われる。

 中国による軍事関係者の接触禁止など、中国は危機管理上、問題のある行動に出ており、米中関係は状況が悪化してきている。このような時には、日本としては同盟関係を重視して、米国と協力するしかないと思われる。

 台湾が食糧備蓄や石油備蓄をすれば、封鎖には強くなろう。ただ水については、台湾は干ばつにはなりそうにないので、別に心配しなくてもいいのではないか。

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