2024年4月23日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年5月6日

 そして中国、ロシアは、1990年代後半に始まったドルの大膨張の余得で経済を大きく成長させた国であり、自律的成長力に欠けています。ロシアのGDPは2000年代6倍強の成長を遂げましたが、これは投機資金が原油価格を急上昇させたからです。中国は2000年代、貿易黒字、外国からの直接投資で年間平均30兆円相当の外貨流入を得、これをインフラ建設、不動産投資で膨らませて高度成長を実現しました。

 産業革命以来蓄積された「先進国」の資本は、今でも世界経済で主要な役割を果たしています。2007年世界で行われた対外直接投資合計約2.1兆ドルのうち、実に約75%は先進諸国によって行われています。そして、2010年末時点で、アメリカから欧州への直接投資残高は、世界全体への投資残高のうち実に55.9%を占めています。因みに、アメリカから中国への直接投資の残高はアメリカの全世界への直接投資残高のうち1.5%を占めるに過ぎません(「米国企業のアジア展開事例とアジア企業の米国展開事例」2012年5月、ジェトロ)。そして、空洞化だと揶揄されてきた米国の製造業は、今でも中国と並んで世界一の生産高を示しています。

 2008年のリーマン・ショックで米国の地位が後退したり、途上国の経済も悪化して政治不安が高まったりしている国際情勢が、これからどうなるかは、欧米の経済が復活するかどうかに大きく拠っています。

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