2024年12月13日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年5月6日

 4月3日付ウェブ米Project Syndicate誌で、Joseph S. Nye米ハーバード大学教授は、BRICSはメンバー諸国にとって外交上の便利な道具であるが、BRICSは異質な諸国が集まったものであり大したことはない、と述べています。

 すなわち、習近平中国国家主席は初めての外遊先としてロシアに立ち寄った後、アフリカ諸国訪問を終えて、南アフリカでのBRICS首脳会議に出席した。そのBRICS首脳会議は、あたかも世界銀行、IMFに挑戦するかのように、BRICS開発銀行を設立することを決めた。しかしそれは政治的な合意にとどまり、各国の出資率等細部は決まっていない。

 12年程前、ゴールドマン・サックスのジム・オニールがBRICsという言葉を発明し、この4カ国のGDPは購買力平価では世界の22%を占めるまでになった。そしてブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国は、BRICsというブランドを自ら利用するようになり、ロシアで最初の会合を行った。2010年には南アフリカがこれに加わる。

 BRICSはメンバー諸国にとって、外交上の便利な道具である。しかし、BRICSは異質な諸国のごたまぜである。中国の経済は他の4カ国すべてを合わせたより大きい。インド、ブラジル、南アフリカは民主的政治体制を取っており、IBSAという名称の下に時々別個の集まりを持っている。中ロは、つるんで米国に盾突くこともあるが、それぞれが米国との関係をないがしろにできない別々の事情を抱えている。また、中ロは、インド、ブラジル、南アフリカが国連安保理常任理事国になるのを妨害したことがある。そして、中国、インド、ロシアはアジアで勢力を争っている。ブラジル、インド、南アフリカは、中国の輸出攻勢を警戒している。

 BRICS諸国の近年の経済成長率は落ちている。ロシアしかり、ブラジル、インドしかりである。

 従って、3年前もBRICsについては懐疑的であったが、今でもそうである、とナイ教授は論じています。

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 ナイ教授がここで述べていることに、全面的に賛成です。ゴールドマン・サックス等の投資銀行は、BRICsとかNext 11とか新たなラベルを発明しては、それを誉めそやすことで、その国の株価をつり上げ、香港、ニューヨーク等でのその株式の上場を請け負っては、大枚の金を儲けてきたのです。


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