バイデンとチェイニーの「共通の思い」
バイデン氏と西部ワイオミング州共和党予備選挙で敗れたリズ・チェイニー下院議員には、「共通の思い」―トランプ再選阻止と「連合軍」の形成がある。
チェイニー下院議員は米メディアとのインタビューの中で、トランプ氏が推薦した候補に敗れると、バイデン大統領が電話を掛けてきたことを明かした。民主党、無党派層並びに共和党保守本流の連携にも言及した。
トランプ再選阻止を目標に掲げているチェイニー氏は、24年米大統領選挙出馬を考えている。仮に出馬しても、チェイニー氏は本気でトランプ前大統領に勝てるとは思っていないだろう。しかし、トランプ氏の信頼性と評価を落とし、本選で再選を阻止することは可能である。
では、バイデン氏とチェイニー氏はどのような戦略でトランプ再選阻止を現実化しようと考えているのだろうか。
「連合軍」の形成
31州における政党別の有権者登録者数に注目してみると、民主党が39.6%、無党派層が31.2%、共和党が29.2%である(21年7月時点、バロットペディア)。20年米大統領選挙で初めて無党派層の有権者登録者数が、共和党を上回った。その後、共和党は21年1月6日に発生したトランプ支持者による米連邦議会議事堂襲撃事件により、有権者登録者数をさらに減らした。
仮にチェイニー氏が大統領選挙に出馬した場合、共和党予備選挙で主として3つの戦略をとることが考えられる。
第1に、政党に登録した有権者のみが参加できる「閉鎖型」予備選挙(Closed Primaries)を実施している南部フロリダ州、西部ネバダ州およびペンシルベニア州等で、反トランプの民主党員と無党派層を一旦共和党員に登録させる。各州によって投票のルールが異なるが、オンラインや郵送、電話によって所属政党の変更は、比較的容易に行えるからだ。
第2に、支持政党の登録変更をした民主党支持者と無党派層に共和党保守本流を加えた「連合軍」を組み、自分に一票を投じてもらう。
第3に、有権者登録の際、支持政党を尋ねないために、全ての有権者が参加できる「開放型」予備選挙(Open Primaries)を行っている南部ジョージア州やテキサス州並びにバージニア州等の共和党予備選挙において、民主党支持者と無党派層に投票を呼び掛ける。
チェイニー氏と一緒に「連合軍」の形成を目指すバイデン氏は、MAGA共和党を「融和」の構想から排除し、24年米大統領選挙の布石を打ったのである。
なぜトランプ機密情報持ち出しにコメントしないのか?
バイデン大統領がフィラデルフィアでの演説で語らなかったことがある。トランプ前大統領の機密情報持ち出しについてである。
バイデン氏やカリーン・ジャンピエール報道官は、トランプ氏の機密情報持ち出しに関してコメントをしない。ジャンピエール報道官は、米司法省は「完全な独立機関」であり、ホワイトハウスは同省の業務に介入や関与をしないと説明する。同省への「無介入・無関与」は、バイデン氏の選挙公約であった。
加えて、ジャンピエール報道官によれば、バイデン氏はトランプ氏の機密情報持ち出しに関して大統領日報(PBD: President’s Daily Briefing)を受け取っていないと言う。