2022年12月6日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年9月16日

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 にもかかわらずイラクで親イラン勢力が大きな力を有しているのは、イラク戦争でフセイン政権が追放されるまでダウア党のようなイラクのシーア派宗教政党の関係者は、イランに亡命して面倒を見て貰っていたという恩義があるからで、戦後、彼らがイラクに戻ってイランの支援を受けてイラクで大きな勢力となっている。しかも、彼らの家族は、依然としてイランで体の良い人質となっているという。

 ゆえに、イラクのシーア派の大多数が反イランでも彼らはイランに頭が上がらない。他方、サドル師は、高名かつ高位なシーア派の宗教指導者であった父親がフセイン政権時に惨殺されており、この父親の殉教を利用して現在の影響力を得ている。しかも、彼は位階を重んじるシーア派の中では、ランクの低い聖職者であり、イラクのシーア派の聖職者の世界で宗教的権威は無いに等しいであろうから、宗教的な権威に欠ける点を過激な言動で補わざるを得ない。

内戦勃発の可能性も

 彼がイランと距離を置くのは、まず、イランに何の恩義も無いからであり、そして、ポピュリストとしてイラクのシーア派が広く感じているイランに対する嫌悪感に乗らざるを得ないからである。

 このように、現在、イラク国内で権力闘争を繰り広げる親イラン派とサドル派はどちらも脛に傷があり、双方とも無理をして現在の勢力を構築しているので、安易な妥協は出来ない。率直に言って、この対立・緊張の落とし所は見えない。

 両者が激突して内戦が勃発してしまう可能性も排除されないであろう。なお、仮に米国が政治的解決を目指して介入すれば、親イラン派もサドル派も米国を非難しつつ矛を収めることが出来る。実は、両者ともそれを内心では期待しているのかもしれない。

  
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