2024年11月22日(金)

教養としての中東情勢

2022年2月2日

 イスラム国(IS)によるシリア北東部ハサカの刑務所襲撃事件は1月31日、クルド人のシリア民主軍(SDF)が10日間の戦闘の末、やっと鎮圧した。戦闘には米軍も参戦、3年前のIS壊滅以来最大の戦闘で、死者は500人を超えた。ISはかつての自分たちの首都ラッカへの大掛かりな攻撃も計画していたという。今回の襲撃は残存勢力が依然顕在であることを示すものだ。

シリア北東部ハサカの刑務所襲撃事件では、多くの子どもたちも犠牲となった(AP/アフロ)

少年700人が〝人間の盾〟に

 襲撃されたのはハサカ近郊の「シナ刑務所」。ISの戦闘員ら3500人が

SDFの管理の下で収容されていた。うち約700人は外国人の戦闘員がISに合流した際、一緒に伴ってきた少年たち。

 今は12歳から17歳に成長している。戦闘員の妻や娘たち6万人は刑務所から約60キロメートル離れた「アルホル収容所」で生活している。

 刑務所が襲撃されたのは1月20日。2台の爆弾車が刑務所に突っ込み、これを合図に攻撃が始まった。攻撃したISの勢力は不明だが、数百人規模とみられている。

 IS側は刑務所を占拠し、SDFと激しく交戦した。ハサカ周辺に駐屯している米部隊(700人)が装甲車などで出動し、SDFを後方から支援した。

 しかし、IS側には解放した囚人らも加わって立てこもり、抵抗した。SDFが31日になってやっと制圧したが、鎮圧に10日間もかかった要因の一つはISが攻撃を回避しようと、少年らを〝人間の盾〟として人質にしたためだ。SDF側の攻撃の矛先が鈍り、時間がかかったようだ。

 だが、最後は総攻撃に踏み切り、一部少年らも犠牲になった。SDFの発表によると、死者はIS側374人、SDF側40人。この他、刑務所の職員77人、市民4人が死亡した。少年2人が遺体で見つかったが、がれきの下にはまだ犠牲者が残っているもよう。囚人200人が脱走したとされる。


新着記事

»もっと見る