必要となってきている状況判断
路線バスを利用する乗客の中には、マスクを着用しないことに対して不安感や、場合によっては嫌悪感を覚える人も少なからずいるだろう。しかし、さまざまな立場や事情の乗客がいる以上、単にマスクを着用していないというだけで排除することはできない。厚労省の呼びかけが「推奨」に留まっているのであればなおさらだ。
マスクの着用については人によって考え方の違いがあり、新型コロナの問題が長引くにつれて、その違いが少しずつ大きくなってきているようにも思える。欧米各国で罰則付きのマスク着用義務が撤廃されるなど脱マスクが進みつつ状況を引き合いに「もはやマスクは必要ない」と主張する人がいる一方で、可能な限りリスクを減らしたいという考えから「マスク着用を義務化してほしい」と主張する人もいる。
政府が今年5月に発表した見解では、屋内であっても、他者と身体的距離が確保できて会話をほとんど行わない場合にはマスク着用の必要がないとしつつ、「通勤ラッシュや人混みの中ではマスクを着用しましょう」と呼びかけるにとどまっている。車内の状況によってはマスク着用の必要性が低いと判断される場合も大いにあるだろう。
だからこそ、単にマスクを着けていないだけで「けしからん」と脊髄反射するのでなく、個別の事情を勘案した理性的な対応が個人にとっても事業者にとっても重要ではないだろうか。