2024年4月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年5月21日

 台北在住のジャーナリスト、Michael Cole が、4月15日付The Diplomat誌ウェブサイト掲載の論説で、台湾は米国からの潜水艦調達を諦め、自前で潜水艦を建造しようとしている可能性があり、台湾が潜水艦技術を獲得するに当たって、日本が果たす役割があり得る、と述べています。

 すなわち、ブッシュ大統領が、8隻のディーゼル・エレクトリック式の潜水艦を台湾に売却すると宣言してから、十年以上経つ。米国がこのタイプの潜水艦を製造するのを何年も前に止めてしまったので、計画は立ち往生しており、台湾は潜水艦を自ら建造しようとしている可能性があるという推測が出てきている。最近のレポートが正しければ、日本が果たす役割があり得る。

 台湾国防部の公式な立場は、米国から潜水艦を調達するということで変わっていないが、台湾が潜水艦隊の近代化に成功するには米国からの直接売却に代わる手段を見つけなければならないであろうということは、今や、ほぼ確実である。

 公式の立場とは矛盾するが、台湾の海軍当局者は、レポートの筆者に、国防部のチームが一度ならず欧州の国々を訪問して、そうした国々からの潜水艦獲得、あるいは、潜水艦の国産計画への協力の可能性を評価した、と非公式に語っている。2011年後半には、長年、潜水艦プログラムに携わってきた、米国の防衛専門家が、台湾は米国からの潜水艦獲得を諦めており、今や国産計画にコミットしている、と言っている。

 それ以来ほとんど動きはなく、新しい潜水艦計画が実現することはないであろうとの結論に達しかけていたが、4月14日のUnited Evening News のレポートは、台湾の当局者が、最近の非公式会談で、日本からの技術移転の可能性について議論したと、報じている。

 台湾国防部はそのことを直ちに否定したが、匿名を条件にThe Diplomat に対して語った日本の防衛当局者は、そうした非公式対話は確かに行われた、と言っている。

 北京の反応への恐れがあるので、台湾との技術交換は厄介であろう。就役後16年で退役することになっている日本の古い潜水艦の調達を台北が求めない理由の一つはそれである。国産計画への日本の支援は、それよりは問題が少ないであろうが、既に緊張が高まっている日中関係を複雑化させる危険がある。

 ベターな選択肢は、東京が米国とノウハウを共有して、その情報を台湾のNaval Shipbuilding Development Center が利用できるようにすることである、と情報源は言っている。

 この線で何らかの進展があるかどうかは、不確実であり、多くの要因に依存している。最も大きいのは、台湾軍が潜水艦建造にコミットし続けるか、台北が、何年もの年数と何十億ドルもの金額を要するプログラムに資金を出す用意があるか、である。米国がそうした計画を許し、米国の防衛業者が台湾のレーダーや武器システム開発を支援することを許すことも必要となろう。米国でこうした計画を主張する者は、ワシントンにおいて、台湾海峡、南シナ海、アジア太平洋に潜水艦を追加する結果をもたらすいかなる計画にも反対する勢力に対抗しなければならないであろう。


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