2024年4月26日(金)

天才たちの雑談

2022年10月18日

イーロン・マスクも進める
低軌道の宇宙開発

瀧口 中須賀先生が研究されている「小型衛星」も気になるのですが、これはどういうものなのでしょうか。

中須賀 重さ1㌔グラム、大きさ10㌢メートル立方の小型衛星を、03年に打ち上げました。当時は半年ぐらい生きれば上出来と思っていましたが、約19年目の現在もまだ元気です。

 小型衛星のメリットは、超低コストで軽いので低い軌道にたくさん投入できるということです。例えば静止軌道上の気象衛星「ひまわり」の高度は約3万6000㌔メートルですが、小型衛星の軌道は低いところで600㌔メートル。もちろん「ひまわり」には良い性能のカメラが載っていますが、どうしても地上を撮影した際の写真は粗くなる。その点では小型衛星は有利ですね。ただ小型衛星は高度が低い分、目的の場所を撮影できる時間は短くなってしまうので、たくさん打ち上げる必要があります。

 こうした低軌道への小型衛星の打ち上げが最近進んでいて、スペースXが「スターリンク」の通信衛星1万2000基を打ち上げる計画で、2000基が既に打ち上げられました。今後の宇宙開発は、静止軌道に大型衛星を打ち上げるものと、低軌道に小型衛星を大量に打ち上げるもの、この2つがビジネス面でしのぎを削っていくことになるのではないかと思います。

江﨑 特に通信面では、「5G」や「6G」を考えると、地上線よりも宇宙の衛星を経由した方が速い、ということに社会が気付き始めていますね。

戸谷 天文学界の中には、衛星が観測の邪魔になるのでは、と心配している雰囲気もあるみたいです。

中須賀 「ダークスカイ問題」ですね。国連でも取り上げられてもいいぐらい、大きな問題だと思います。1万2000基を計画している「スターリンク」に対しても、実は批判も高まっています。

江﨑 そうすると、簡単に宇宙に行ける宇宙エレベーターが欲しくなるんです(笑)。

 
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