2024年11月25日(月)

天才たちの雑談

2022年10月18日

イーロン・マスクも進める
低軌道の宇宙開発

瀧口 中須賀先生が研究されている「小型衛星」も気になるのですが、これはどういうものなのでしょうか。

中須賀 重さ1㌔グラム、大きさ10㌢メートル立方の小型衛星を、03年に打ち上げました。当時は半年ぐらい生きれば上出来と思っていましたが、約19年目の現在もまだ元気です。

 小型衛星のメリットは、超低コストで軽いので低い軌道にたくさん投入できるということです。例えば静止軌道上の気象衛星「ひまわり」の高度は約3万6000㌔メートルですが、小型衛星の軌道は低いところで600㌔メートル。もちろん「ひまわり」には良い性能のカメラが載っていますが、どうしても地上を撮影した際の写真は粗くなる。その点では小型衛星は有利ですね。ただ小型衛星は高度が低い分、目的の場所を撮影できる時間は短くなってしまうので、たくさん打ち上げる必要があります。

 こうした低軌道への小型衛星の打ち上げが最近進んでいて、スペースXが「スターリンク」の通信衛星1万2000基を打ち上げる計画で、2000基が既に打ち上げられました。今後の宇宙開発は、静止軌道に大型衛星を打ち上げるものと、低軌道に小型衛星を大量に打ち上げるもの、この2つがビジネス面でしのぎを削っていくことになるのではないかと思います。

江﨑 特に通信面では、「5G」や「6G」を考えると、地上線よりも宇宙の衛星を経由した方が速い、ということに社会が気付き始めていますね。

戸谷 天文学界の中には、衛星が観測の邪魔になるのでは、と心配している雰囲気もあるみたいです。

中須賀 「ダークスカイ問題」ですね。国連でも取り上げられてもいいぐらい、大きな問題だと思います。1万2000基を計画している「スターリンク」に対しても、実は批判も高まっています。

江﨑 そうすると、簡単に宇宙に行ける宇宙エレベーターが欲しくなるんです(笑)。

 
 『Wedge』2022年2月号で〚人類×テックの未来〛テクノロジーの新潮流 変革のチャンスをつかめ」を特集しております。
 メタバース、自律型ロボット──。世界では次々と新しいテクノロジーが誕生している。日本でも既存技術を有効活用し、GAFAなどに対抗すべく、世界で主導権を握ろうとする動きもある。意外に思えるかもしれないが、かつて日本で隆盛したSF小説や漫画にヒントが隠れていたりもする。テクノロジーの新潮流が見えてきた中で、人類はこの変革のチャンスをどのように生かしていくべきか考える。
 特集はWedge Online Premiumにてご購入することができます。
 
 
 
Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。
Wedge 2022年11月号より
価値を売る経営で 安いニッポンから抜け出せ
価値を売る経営で 安いニッポンから抜け出せ

バブル崩壊以降、日本の物価と賃金は低迷し続けている。この間、企業は“安値競争”を繰り広げ、「良いものを安く売る」努力に傾倒した。しかし、安易な価格競争は誰も幸せにしない。価値あるものには適正な値決めが必要だ。お茶の間にも浸透した“安いニッポン”─。脱却のヒントを“価値を生み出す現場”から探ろう。


新着記事

»もっと見る