2024年11月25日(月)

バイデンのアメリカ

2022年10月18日

 ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)スポークスマンのジョン・カービー氏も、「近代的核保有国の指導者であるプーチンが、最近、何度か核兵器使用の脅しをかけ、ウクライナの緊張が増大しつつある現状にかんがみ、危険が高まってきている事実を正確に反映したものだ」として、大統領発言を擁護した。

トランプらも強く批判

 しかし、その後も余波は続いた。

 トランプ前大統領は去る9日、アリゾナ州メサのトランプ支持派集会で早速、この問題に触れ、「指導者たる者は賢くあるべきで、自分の言葉に気をつけなければならない。馬鹿なやつら(バイデン陣営)の言う通りなら、第3次世界戦争になってしまう……。そうなれば今日存在する核という兵器類から見ても、地球上には何も残らなくなるだろう」と酷評した。

 マイク・ポンペオ前国務長官も、同日のテレビ番組で「不用意極まる発言だ。より重要なことは、トランプ政権当時の4年間はプーチンの行動を抑止できたのに、現政権はそれに失敗しているということだ」と激しくかみついた。

 中立的立場のマイク・マレン前統合参謀本部議長も「バイデン大統領は、(核使用について)最悪の言葉を使ったが、そうしたレトリックは引っ込め、プーチン大統領をウクライナとの交渉の場につかせるべく全力をつくすべきだ」とけん制した。

 これに対し、上院外交委員会の有力メンバーであるクリス・マーフィー民主党議員は、「核戦争が起こるリスクがあることを国民に知らせる点で、大統領の言ったことは間違っていない。実際に、われわれはロシアの危険極まりない人物を相手にし、彼が一体、この先何をしでかすのか、予測もつかない状況下にあるのだ」として、大統領を弁護した。

見えてくる米国民のウクライナ戦争への世論

 しかし今回、全米の主要メディアが党派を超え、バイデン発言を一斉に大きく取り上げた背景には、それが単なるセンセーショナルな失言にとどまらず、米国の対外コミットメントをめぐる国論の分断を招きかねない重大な要素をはらんでいたからにほかならない。

 すなわち、米国は、ウクライナのような友好国が核攻撃を受けた場合、際限ないエスカレーションを覚悟してまでも、報復措置として相応の核使用に踏み切るのかという、いわば米軍核抑止力の〝本気度〟をめぐる議論だ。

 そしてもし、実際にロシア軍によるウクライナ国内での戦術核使用を受けて、米軍がロシア占領下にある一部地域を標的とした限定的核報復に出るとすれば、それはすなわち、米露間の直接的な核交戦を引き起こし、ひいてはバイデン大統領が言及したような「アルマゲドン」という恐るべきシナリオもありうるということになる。


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