OPECプラスは10月5日、200万B/Dの減産で合意した。この減産合意は唐突であり、その噂だけでここ数ヶ月間低下していた油価の再上昇を招いた。同日付のウォールストリート・ジャーナル紙の社説‘The Saudis Snub Biden Again’は、中間選挙を控えるバイデン政権は、減産によるガソリン価格の高騰は選挙に不利になるのでサウジアラビア他を非難しているが、この様な事態を招いたのはバイデン政権の極端な脱炭素政策のせいであると批判している。主要点は次の通り。
・バイデン政権の高官達はサウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦(UAE)に対してこの生産削減に反対するよう働きかけを行っていたが、サウジアラビアは、こうした米国の要請を聞いた上で、さらに生産削減量を100万B/D上乗せした(注:その結果200万B/Dの減産となった)。しかし、サウジアラビアは、米国との関係を危うくするとは考え無かったようであり、ロシアとの友好関係を米国での自国の評判よりも重視したのである。
・ホワイトハウスは声明で減産は「近視眼的」であり、化石燃料への依存を減らすことが米国にとり如何に重要であるかを想起させるとしているが、馬鹿げている。バイデンは、米国の原油と天然ガスの生産を削減すると約束して大統領に就任し、(原油と天然ガスの)規制派や民主党は、(原油と天然ガスの)掘削や投資を商業的に成り立たないようにするあらゆる努力を惜しまなかった。
・2020年の大統領選挙でバイデン大統領は、サウジアラビアを、「のけ者」と呼び、同国に約束した武器の供給を遅らせ、サウジアラビアの仇敵であるイランに何百億ドルをも提供する核合意を再開しようとし続けて来た。しかし、7月には、バイデン大統領は、サウジアラビアを訪問して、サウジアラビアの皇太子に恭しく原油の増産を懇願し、みっともなくも、拳を突き合わせた(コロナ渦での握手の代わり)。
・バイデン政権は、化石燃料を禁止しようとする環境左派を極端に恐れ、また、利益を共にしているので、原油と天然ガスの生産についての規制の撤廃をしないであろう。
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11月に中間選挙を控える米バイデン政権にとり、選挙直前に再度、生産削減によりガソリン価格が上昇することは容認出来ないのは当然であろう。なお、米国で夏前にガロン当たり5ドル以上に上昇したガソリン価格が3ドル台に低下したのは、米国が原油の戦略備蓄を放出したからであり、最新のデータでは、米国はその戦略備蓄をほぼ使い尽くしており、原油減産があろうが無かろうがガソリン価格の再上昇は不可避では無いかと思われる。
上記の社説は、サウジアラビアを初めとするペルシャ湾岸のアラブ産油国に生産削減をしないよう「もし、(生産削減を)予定通り行うならば、貴国の米国における評判と米国との関係に非常に大きな政治的なリスクがある」とまでの強い言葉で要請したが聞き入れられなかったことに対して、これらの諸国が、長年の米国との友好関係よりもロシアとの友好関係を重んじたと批判しているが、特に米国の怒りはサウジアラビアに集中している。10月6日、ブリンケン米国務長官は、サウジアラビアとの関係についてさまざまな選択肢を検討していると発言している。