2024年11月24日(日)

世界の記述

2022年11月1日

習政権発足から対中投資半減、対東南アジアに勢い

 財訊の謝社長によれば、中国が民族主義を鼓吹し始めた2017年には、早くも中国経済の変調が見え始めたそうだ。しかし、台商は、習近平氏が共産党総書記に就任した12年から、既に中国ビジネスにブレーキをかけ始めていた。

 台湾の対中投資は、この10年間一貫して減少を続けている。台湾経済省投審会によれば、台湾の対中投資額は、2021年は58億6300万ドルで、12年の127億9200万ドルの実に半分。22年1~9月は30億4768万ドルで、前年同期比6.53%増でわずかに増えたが、投資件数は16.2%減少している。

 実際に生産移転に踏み切った台商も少なくない。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が10月4日に発表したリポート「移転の時」によれば、台湾企業の経営幹部約500人に「製造部門や調達部門を中国から移転を検討または開始したか」と尋ねたところ、「既に移転を始めた」が25.7%、「移転を検討している」が33.2%で、合わせて約6割を占めた。

 台湾企業の危機感も強い。「台湾の中国への経済的依存を減らすべきか」との質問に対しては「強くそう思う」が33.1%、「割とそう思う」が43.2%で8割近くに達した。なお、CSISの調査が行われたのは、ペロシ米下院議長が台湾を訪れる前の7月で、その後、中国が台湾に加えた軍事的圧力の影響は回答に反映されていない。

 では、台湾企業が中国に代わる進出先としてどこを考えているのか。CSIS のリポートでも、中国からの移転を開始・検討していると回答した企業経営幹部が、移転先として上げたのが「東南アジア」(63.1%)、ついで「台湾」(51.3%)、3位が「北東アジア(日本と韓国)」(19.5%)だった。

 経済貿易の東南アジアシフトは国策でもある。蔡英文政権は発足直後の16年8月、東南アジア諸国連合(ASEAN)、南アジア、オセアニアの「新南向18カ国」と経済貿易のほか、科学や文化、人的交流など全面的な関係強化を目指す「新南向政策」を始動した。

 台湾政府は17年から、アジア太平洋地域と対話するフォーラム「玉山論壇」を毎年開いている。蔡総統は今年10月に開かれた「玉山論壇」で演説し、台湾の「新南向18カ国」への投資額が、今年1~7月は計22億ドルで対外投資額全体の43.9%を占めたことを明らかにした。18カ国のうち、東南アジア諸国との貿易額は21年、1490億ドルで過去最高になったとして、「新南向政策」の成果を強調した。

 新南向18カ国に対する台湾企業の投資は、既に中国を上回る利益を生んでいる。台湾メディアの自由時報によると、調査会社のCRIF中華徴信所は、台湾の上場企業が今年1~3月に18カ国で得た投資収入が1621億8000万台湾元(約7428億円)と、前年同期の約3倍に増えたことを明らかにした。同じ時期、台湾上場企業の中国での投資収入は、前年同期比10.63%減の1026億4500万元(約4700億円)で、18カ国に逆転を許した。


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