2024年11月24日(日)

世界の記述

2022年11月1日

 CRIF中華徴信所によれば、1~6月の経済成長率は、中国が「ゼロコロナ」政策のあおりで2.5%と低迷したのに対し、新南向18カ国のうち、台湾上場企業の投資が最も多いシンガポールは4.6%、ベトナムは6.42%。新南向18カ国の投資収入が、1~6月も中国を上回ることは確実で、台湾の東南アジアへのシフトが今後も加速することは間違いない。

それでも東南アジア「チャイナプラスワン」の位置づけ

 東南アジア経済に勢いがあり、中国経済の今後に不安はあるとはいえ、中国14億人の巨大市場と充実した供給網はかけがえのない魅力でもある。CSISのリポートでも、台湾企業の経営幹部約500人のうち「中国外への生産部門と調達部門の移転は考えていない」との答えも31.1%に上った。

 台湾の経済団体、全国工業総会(工総)が今年7月、中国上海で操業する台商86社を対象に調べたところ、66.3%が今後「中国以外で投資する」と回答。しかし「工場と供給網を中国以外に移す」との答えは9.3%と1割に満たなかった。

 工総によれば、調査対象となった台商の多くは、中国市場が長期的には成長を続けると信じている。そして、中国同様の生産条件と規模の大きな供給網がある国を、他に見つけるのは至難と考えている。新型コロナウイルス禍や地政学的対立が供給網に与える衝撃を和らげるため、東南アジアや台湾への生産ラインの移転を検討・実施しているが、あくまでリスクの分散を図る「チャイナプラスワン」の強化だ。

 台湾誌・天下雑誌(電子版)によれば、台湾企業で自転車世界大手、巨大機械(ジャイアント)は今年、ベトナム北部で組み立て工場の操業を始めた。しかし、中国の既存工場を縮小する考えは全くない。唯一の変化は、ベトナムと東欧工場は欧米市場供給に特化し、中国工場は「中国で生産、中国で販売」する地産地消の計画を達成したことだ。

 中国事業の成長率は毎年30~40%に達すると指摘した上、「中国の高級自転車の需要は、今後も増加が続く見通しだ。中国の内需は巨大で、何があっても放棄できない」と話している。

 バッグ製造で世界3位に入る大手企業で、欧米ブランドのスポーツ用品やレザーバッグを受託製造する、威宏控股(WWホールディング)は、米中貿易紛争の開始後「分散すれど放棄せず」の経営戦略を採用した。ベトナムやカンボジアにも工場を持つが、中国工場は全体の4~5割の生産能力を残し、欧米ブランド品を中国市場に供給している。

 中国の台商の全国組織「全国台企連」の李政宏会長は「いわゆる『台商が大挙して中国撤退』は完全なフェイクだ」と指摘。「台商が14億人の市場を捨てることなどあり得ない」と豪語している。政治的プロパガンダというより本心であろう。

 
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