*「イタリアは欧州と西側世界の完全な一部であり」「ウクライナを支持する北大西洋条約機構(NATO)の信頼出来るパートナーであり続ける」。「エネルギーに関わるプーチンの恐喝に屈することはなく」「ウクライナの自由が我々の心の平安と取引き出来ると考える者は間違っている」。
*「欧州統合を遅延せしめ妨害することは望まない」。しかし、EUが「一級と二級の加盟国に分断されたエリート・クラブ、あるいは帳簿を管理する取締役会が支配する会社」であってはならない。EU復興基金の支援を得るための(ドラギ政権とEUが合意した)復興計画についてはエネルギーと原材料の価格高騰を含む状況の変化を反映するよう調整すべく協議したい。
*エネルギー価格の高騰とインフレに直面する家計とビジネスを支援することは「巨額の財政的コミットメント」であり、その他の施策の遅延を招くかも知れない。
以上を要するに、メローニの政権は西側にとってまずまず安心出来るスタートを切ったということである。しかし、最も大きな不確実性は財政運営であろう。
見えていない構造改革の中身
ドラギ政権がEUと合意した復興計画は維持する方針であるが、状況の変化に対応した調整が必要としている。復興計画の核心を成す構造改革を実行するかどうかメローニは明言していない。
エネルギー価格高騰とインフレ対策に巨額を投ずるつもりのようであるが、減税の公約もある。先行きの不透明感、欧州中央銀行(ECB)の利上げ姿勢への転換によって国債利回りが上昇することになれば、財政を圧迫するであろう。
メローニの政権が誕生したのは、他の政党が順繰りに政権を持ち回ったものの経済の停滞を打破出来なかったことに失望した多くの有権者が最後に残ったFdIに賭けた――FdIはドラギ政権に参加することも拒否した――ということかと思わる。西側としては、メローニの統治能力は未知数であるが、イタリアの民主的な選択を尊重し、必要とあれば可能な支援はする、との姿勢で臨むのが適切であろう。