2022年11月28日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年11月17日

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 イタリアでは総選挙の結果を受け、右派FdI(イタリアの同胞)のジョルジャ・メローニが首相となった。Economist誌11月5日号の社説は、メローニ政権は閣僚人事および政策の面で比較的安心出来るスタートを切ったが、難題をメローニ首相がどのように克服して行けるかは明らかでない、と論じている。主要点は次の通り。

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・メローニ政権は予想より長く持つかもしれない。メローニは三つの安心材料を提供している。

・第一に、ウクライナについての彼女の態度は確固たるものである。彼女はプーチンを略奪者と見ている。彼女は議会における最初の演説で「主権国家の領土的一体性の侵害は受け入れられないだけでなく、我々の国益を守る最善の道である」としてウクライナに対するイタリアの支持を強調した。連立政権のパートナーである「同盟」のサルヴィーニとFI(フォルツァ・イタリア)のベルルスコーニにはプーチンにおべっかを使った前歴があるが、連立政権におけるFdIの立場は圧倒的だ。また、前任のドラギがエネルギー供給の多様化を巧みに進めたお陰で、プーチンが欧州を凍えさせようとしても、イタリアが「弱い環」にはならないように見える。

・第二に、多くの人がメローニをビクトル・オルバン(ハンガリー首相)の女性版のように見て来たが、メローニが欧州連合(EU)と喧嘩したがっているようには見えない。外相には欧州議会元議長のアントニオ・タヤーニを起用した。彼女はドラギとEUの間で合意された経済改革計画を多少手直しして維持するようだ。

・第三に、財務相として、中央銀行の経歴を有する尊敬される人材を起用できなかったのは残念だが、「同盟」の副党首でプロ・ビジネスの一派に属するジャンカルロ・ジョルジエッティ(ドラギ政権では経済開発相)が起用されたのは妥当だ。

・以上の通り、これまでのところ、比較的安心させられる。しかし、ユーロ圏が恐らく不況に向かうにつれ、イタリアはEU内で最も心配の種になる。メローニはイタリア経済を成長に転じさせる興味あるアイディアをまだ示していない。多くの観測筋はドラギが推進した改革のプロセスが今や遅延し、あるいは国家主義と保護主義に逆転すると心配している。イタリアの巨額の債務(2兆7000億ユーロ、国内総生産(GDP)比150%)は金利が更に上昇すれば耐え難いものになる。メローニの政治的経験の浅さも懸念材料だろう。

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 メローニは、選挙戦中から極端な主張を封印し、欧米との協調路線を強調し、FdIが主流の保守の党に脱皮したことを印象づけることに腐心して来たが、10月25日に彼女が議会下院で行った最初の演説でも、1938年のムッソリーニ独裁下の反ユダヤ法は「イタリアの歴史の最悪の瞬間」であったとし、「ファシズムを含む如何なる非民主主義の政権にも共感したことはない」と述べ、FdIにつきまとうネオ・ファシズムの懸念の払拭を試みた。

 上記の社説には、政策面での安心材料としてウクライナ、EU、財務相の人選への言及があるが、同じ演説における彼女の発言ぶりを摘記すれば次の通りである。

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