2024年5月6日(月)

ルポ・少年院の子どもたち

2013年6月17日

 このまま何も変わらず家族のもとへ帰れば、また悲しい思いをさせてしまうと考え、必死に変わろうとした結果だと言う。諦めずに得たものは「努力することの楽しさ」だった。それまでの非行がカッコ悪く、責任のない行動に思えるようになってきた。「自分の思いのままに行動するのは小学生と同じだ」とか「精神年齢が低すぎて恥ずかしい」と思えてきた。

 努力することの楽しさをもう少し具体的に聞かせてもらうと、

 「非行して得たものよりも、努力して得たものの方が魅力があるんです。努力して得たものは楽しい。たとえば長距離走を走ってタイムが上がったり、生活面では、一生懸命勉強すると賞が取れたりします。そういうものを求めているうちに非行には魅力がなくなりました。周りに迷惑をかけてまですることではありません。努力して得ることのほうが快感で、また次に得るための原動力になっています」

「自分は負けなかった」

 また、自身の変化ということでひとつのエピソードを聞かせてくれた。

 「一時寮内の雰囲気が緩くなったときに集団規律違反が起きました。厳しく言ってくれる人がいなくなってしまったので、じゃあ自分が指摘しようと決心したんです。でも何も変えられなかった。そこで先生に相談したところ「本気を出したのか」と言われて、それからは「諦めずに精神的な限界まで戦おう」と思いました。これが、自分の変化で一番印象に残っているものです」

 「その人たちを社会や以前の不良仲間と想定して、ここで負けているようじゃ、社会に戻っても、すぐに非行をしてしまう。だから闘い続けられるようにならなければいけないと思ったのです」

 しかし、多勢に無勢でB少年は環境を変えることが出来なかったと思っている。しかし、その反面、彼は「自分は負けなかった」とはっきり口にしている。

 狭い空間で集団生活を送っているのだから、気まずい空気を作りたくなかったはずだ。しかし、彼は正しいと思う行動を取った。これは明らかに彼の自信に繋がっているはずだ。

 本稿の締めにあたり、S教官にB少年の将来への願いを聞いた。

 「かなり重大な事件を犯しているので、被害者のもとに直接謝罪に行けるかどうかはわかりませんが、本人には謝罪したい気持ちはあるんです」

 「今を大切にする生き方や学ぶ力を身につけることが出来たので、これからは自分の目標や夢に向かって努力して、そして実現してほしい。人に感動を与えたいという夢があるんだから、人に迷惑を掛けた分、それを実現してお返ししてほしいと思います」


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