スモールステップで段階ごとに取り組む
B少年の担任、S法務教官に会う。
「期間が長い理由は事件の重大性と本人の資質的な面です。彼には「水府学院」の教育内容が適しているのですが、本来の11カ月半よりも時間が掛かると家庭裁判所で判断したためです。」とB少年を担当するS法務教官は言う。
では、その1年半の間にどのような教育をするのだろうか。 B少年の個人別教育目標についてS教官にまとめてもらった。
1.「非行に至った自身の問題点をしっかりと理解すること」
被害者に対して今後どのような責任を取るのかを考えさせる。
2.「家族関係の調整」
対人スキルを向上させる。そして家族関係を修復する。
3.「少年院を出院後の生活設計を立てる」
自立的に努力する姿勢を身につける。
これら3つの目標を入院時、中間期、出院準備期によって、さらに具体化し、細分化した小さなステップが作られている。「○○○ができるようになった」「○○○が考えられるようになった」など、段階ごとに教育目標と内容は具体的に示されている。
「目標が見えていないと具体的にどう頑張ればいいのかわからないですからね。そのスモールステップは個々の先生のやり方によっても異なりますし、それぞれの少年によっても違っています。通常では4ステップくらいですが、彼の場合は期間が長いので8ステップに分けられています」
B少年にとって「家族」とは
少年院に入る大半の少年たちは片親のケースが多い。しかし、B少年の家族構成は両親が揃い、すでに独立している兄と大学生の姉がいる。B少年が末っ子だ。ただ、母親がとても強く、一方的に話すことを父親はだまって聞いているという関係なのだそうだ。もちろんその強さはB少年にも向けられ、彼の気持ちを聞こうともしないまま、NPO団体等、更生の相談先で学んできた知識を頭ごなしにB少年にぶつけていたようだ。それには反論することができなかった。