ハーバード大学のケネス教授がProject Syndicateのサイトに10月31日付けで‘China’s Diminishing Returns’(中国の低減する収益)と題する論説を寄稿、中国経済の今後への悲観論を述べている。要旨は次の通りである。
中国では、不動産とインフラへの国家主導の投資の急激な増加が住宅と事業所の価格の下落を起こし、経済成長を遅らせ、収益を低減させている。これは中国の国内総生産(GDP)の60%以上を占める貧しい小都市で顕著だ。
第3、第4層の都市での住宅価格はここ2年で約15~20%下落した。何らかの金融停滞が起こる可能性が高く、それに伴う貸付の付随的減少は成長を妨げる。
不動産は中国経済において大きなシェアを占めているので、不動産での長引く不況は1990年以降の日本の失われた数十年に似た何年もの沈滞を引き起こしうる。
2、3年前まで、住宅価格の急上昇は所得の急上昇で支えられ、将来の所得上昇の期待がさらなる価格上昇を生んでいた。所得の上昇が失速すれば、住宅および商業用不動産価格は崩落し、その分野に貸し付けをしていた銀行や地方政府を巻き添えにする可能性がある。
中国の経済成長率の下落は加速しており、国際通貨基金(IMF)は2023年の成長率を4.4%と予測している。
中国と世界経済は転換期を迎えているように見える。グローバリゼーションの巻き戻しとともに、政治的緊張の高まりは生産性を低め、長期のインフレをもたらすだろう。長期の実質金利の上昇と米ドルの高騰は金融的脆弱性を引き起こすだろう。欧州が深い不況に陥り、米国も不況に陥りそうな中、中国は停滞を輸出増により抜け出すことは考え難い。
中国政府が市場的改革を採用する気にならない中、スムーズなランディングは以前と比べてありそうにない。
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この論説は、中国における不動産バブルが崩壊しそうであることを指摘したものである。ロゴフ教授はIMFのチーフ・エコノミストを01~03年に勤めたこともある人で、彼の分析は傾聴に値すると思われる。
中国の経済成長は減速してきており、今後とも低成長にとどまる可能性が高い。