2024年12月30日(月)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年12月6日

 延長の末、PK戦でクロアチア代表に敗れるも、ドイツ戦とスペイン戦で2度の奇跡を起こし、W杯決勝トーナメント進出を果たした日本代表。強豪チームとの実力差をチーム戦術でカバーし〝ジャイアント・キリング〟を果たすその姿に鼓舞された国民は多いはずだ。そして、海外選手との体格差を埋めるために常に「思考し続ける」日本選手たちの姿は、 コミックス累計1600万部を突破した国民的人気サッカー漫画『アオアシ』(小学館)主人公・青井葦人選手のプレースタイルに通じるものがある。
 『Wedge』本誌連載『MANGAの道は世界に通ず』の筆者で、コンテンツビジネスを手掛ける経営者でもある保手濱彰人氏が、企画発案者・荻野克展氏と現編集者・今野真吾氏の2人に聞く。(聞き手/構成・編集部 川崎隆司)
『アオアシ』主人公の青井葦人選手(SHOGAKUKAN)

保手濱 弊社では日本のキャラクターを世界に発信するビジネスを手掛けており、私自身も幼少期から現在に至るまで漫画に夢中なことから、今も月100冊以上を読んでいる。その中でも『アオアシ』は本当に大好きな作品の一つだ。

 荻野さんが企画を立ち上げ、漫画家・小林有吾氏に話を持ち掛けたと伺ったが、連載開始前にどのような構想があったのか。

保手濱彰人 Akihito Hotehama
キャラアート代表取締役会長
1984年生まれ。東京大学工学部中退。在学中に起業するなどして2014年に株式会社ダブルエル(現・キャラアート)を創業。現在は日本のポップカルチャー・コンテンツの国際展開を図ることに注力している。

荻野 『ビッグコミックスピリッツ』編集部に在籍当時、いつかサッカー漫画を雑誌の柱としたいと考えていた。メジャースポーツを扱った作品はヒットしやすく、特にサッカーは国内外問わず人気の競技だったからだ。

 ただし『キャプテン翼』(集英社)や『GIANT KILLING』(講談社)など、これまでの名作とは異なる新たな切り口で、かつ、われわれ青年誌の読者層である20代~40代にも響くものでないと広まらない。考え抜いた末にたどり着いたのが「育成」というコンセプトだった。

荻野克展 Katsunobu Ogino
小学館『ビッグコミックオリジナル』編集部 副編集長 『アオアシ』の企画発案者。実写映画化もされた人気漫画『ソラニン』や『土竜の唄』など、数々の人気漫画に携わる。元ラガーマン。

今野 『アオアシ』の主人公・葦人が所属するのはJリーグチームの下部組織であるJユース。彼らは高校生でありながら、プロの世界を目指してプレーする。本作品では成長する主人公たちの視点だけでなく、監督やコーチなど、彼らを育成する大人目線の思考や葛藤なども描かれている。クラブチームの選手や監督たちへの生の取材を通じてリアリティーを持たせ、育成する側・される側双方の視点を織り交ぜつつストーリーが進行していくところが、本作品の特徴だ。

今野慎吾 Shingo Konno
小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ』編集部 デスク 現担当編集者。荻野とともに立ち上げ当時から関わり、作品作りのために多くのサッカー現場を取材。好きなJ1チームは川崎フロンターレ。
日本サッカーにおける「育成」の重要性を語る福田監督(コミックス1巻第2話、SHOGAKUKAN)

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