人口問題の新な課題
青写真が示され、目標が設定されたからといって、安泰とは言えない。
人口動向についてみると、出生率の地域差は依然として大きい。国連予測では2022年から2100年までに、世界人口は30%増加するが、アフリカの人口は2.75倍になると予測されている。中央アフリカ、西アフリカでは21世紀末においても合計特殊出生率は2を超えたままである。東アフリカと北アフリカでも1.9を超えている。
アジアでは東アジアを中心に出生率はヨーロッパ並みに低下するが、西アジア、中央アジアでは1.8以上を維持している。現在も低所得国が多いこれらの地域は、引き続いて増加する人口拡大が、今後の発展の足枷になるのではないかと懸念される。
人口移動に着目すると、ヨーロッパ、北アメリカ、オセアニアでは21世紀を通じて人口千人あたりの純移動率がプラスとなっている。すなわち人口流入が続くということである。
国連予測によると、2100年時点の純移動数(流入)は、ヨーロッパで81万人、北アメリカ128万人、オセアニア15万人となっている。現在の規模を多少上回る、地域外からの人口流入が続くと見ているのだ。
アフリカ、アジア、ラテンアメリカ・カリブ海諸国では、それぞれ、39万人、165万人、20万人の純流出となっている。純移動率がプラスの移民受け入れ地域の出生率はいずれも低いので、地域外に出自を持つ人口が年々、増加することを意味する。経済格差や文化摩擦が社会を不安定にするのではないだろうか。
出生率の低下は歓迎すべきことではあるが、二つの点で注視する必要がある。中国、インド、ブラジルなどの新興国では、経済発展とともに起きた急速な出生率低下が、人口年齢構成を大きく変えている。急速な少子高齢化によって、国民が十分に豊かになる前に、急速な高齢化が進むこととなって、大きな負担となると予想される。
国連予測が想定する2100年の出生率は、ヨーロッパ、北アメリカで若干、回復すると見込まれている。しかしおおむね2.1程度の人口を維持できる人口置換水準には遠く及ばない。中でも東アジアでは1.50、南ヨーロッパでも1.57と世界の中でも最低水準である。半世紀前に期待された静止人口は実現できないのだろうか。
ホモ・サピエンスのうちで、経済、技術、文化などの面で最も成功したと考えられる人口集団から人口は縮小していき、22世紀以降には地球人口全体の問題になるのではないかと想像してしまう。かつてさまざまな人類がアフリカから生まれ、拡散し、滅亡したように、ホモ・サピエンスも衰亡に向かっているのではないかと思わざるを得ない。