ウクライナ戦争と24年米大統領選挙
80歳のバイデン大統領と44歳のゼレンスキー大統領には、親子ほどの年齢差がある。バイデン大統領がゼレンスキー大統領に親しみを込めて肩を組む動作と表情は、ボー氏に接しているかのように見える。
20年米大統領選挙において、ゼレンスキー大統領がバイデン大統領の次男ハンター氏のウクライナビジネスの情報をトランプ前大統領に渡していたら、このような蜜月関係にはならず、ウクライナ支援にも微妙な影響を及ぼしていたかもしれない。
バイデン政権の高官は、バイデン大統領とゼレンスキー大統領の首脳会談の直前に記者団に対して、「バイデン大統領はゼレンスキー大統領に(プーチン大統領と)和平交渉のテーブルにつくように圧力をかけない」と語った。また、米連邦議会や同盟国と協力してウクライナ支援を継続することにより、「機が熟したとき、ウクライナは有利な立場でロシアとの和平交渉に臨むことができる」と説明した。
今後、24年米大統領選挙とウクライナ戦争が密接に関わってくるのではないだろうか。戦争の長期化は、バイデン大統領ないし民主党大統領候補にとってマイナス要因になる可能性が高い。共和党大統領候補はこの戦争を主要な争点にして、MAGA票を固めるのは明らかだ。加えて、ウクライナへの財政支援並びに武器供与に懐疑的な無党派層の票を取り込む公算があるからだ。
共和党は大統領選挙を有利に進めるために、戦争の「泥沼化」を期待するだろう。仮にウクライナがロシアに敗北すれば、「バイデンは民主主義を守れなかった」と激しく批判をするのは明白だ。
となると、民主党の視点に立てば、両党の大統領候補によるテレビ討論会が始まる24年秋までには、遅くとも戦争終結の目途が立っていなければならない。理想的には、同年から始まる共和党予備選挙の前に戦争が終結していることである。そうなれば、共和党はウクライナ戦争を民主党への「攻撃材料」にすることができない。
もし24年11月5日の投開票日が近づいても戦争が終結していない場合、ロシアとの和平交渉のテーブルにつき、終結の合意に至るように、バイデン大統領はゼレンスキー大統領に圧力をかけるとみてよい。
ゼレンスキー大統領は次期米大統領選挙において、バイデン大統領ないし民主党大統領候補の勝利を望んでいることは確かだ。23年に戦争が終結すれば、民主党にプラス要因になり、同党大統領候補は「民主主義を守り、専制主義を打ち負かした」と米国民にアピールできる。
しかし、23年に戦争が終結しなければ、ゼレンスキー大統領はウクライナへの財政支援と武器供与打ち切りを主張するMAGAに支持された共和党大統領候補と戦う民主党大統領候補を援護射撃するために、ロシアとの和平合意を達成しようと柔軟に対応するかもしれない。
仮にそうなれば、24年米大統領選挙でゼレンスキー大統領がバイデン民主党を救ったことになる。