トランプと「中国の銀行口座」
米下院は1月3日から共和党が多数派となり、今後、バイデン大統領の次男ハンター氏のウクライナと中国ビジネスの調査が行われると見られている。同党はハンター氏に対して「魔女狩り」を行い、MAGAの士気を高めて、少なくとも24年米大統領選挙まで、彼らをつなぎ留めたい考えだ。
これに対して、トランプ前大統領の納税記録から「攻撃材料」を得たバイデン大統領は、同前大統領とMAGA共和党に対してカンターパンチを打つことができるようになった。トランプ氏と海外ビジネスの関係が明らかになったからだ。
公開された2015年~20年までの納税記録によれば、トランプ前大統領は中国、イギリス、アイルランド、カリブ海のセント・マーチンに銀行口座を持っていた。
さらに、トランプ前大統領はアゼルバイジャン、インド、インドネシア、パナマ、フィリピン、トルコ並びにアラブ首長国連邦で収入を得ていた。トランプ氏の16年の海外総所得は3800万ドル(約49億6000万円)、17年は5500万ドル(約71億9000万円)であった。16年における国内納税額はわずか750ドル(約9万8000円)であるのに対して、海外は120万ドル(約1億5700万円)であった。
米ABCニュースの法律専門家は、トランプ氏の納税に関して「節税であり、犯罪ではない」と述べた上で、今後、法的ではなく政治的争点になるだろうと予測した。
トランプの「大嘘」
トランプ前大統領は、20年米大統領選挙でのテレビ討論会で、「大嘘」をついていたことが明らかになった。
当時の映像を確認してみると、1回目のテレビ討論会で、米FOXニュースの司会者クリス・ウォレス氏(現在米CNN)が、「2年間(16年と17年)にそれぞれ750ドルの連邦所得税を支払ったのは事実か」と尋ねると、トランプ大統領(当時)は否定し、「私は何百万ドルも支払った」と回答していた。
最初は右手のみ、次に両手を動かして、ウォレス氏を必至に説得するトランプ氏の映像が残っている。その最中、バイデン副大統領(当時)はトランプ氏に向かって、「納税記録を見せろ」と語っている。
さらに、最後のテレビ討論会で、米NBCニュースのホワイトハウス担当記者であったクリスティン・ウェルカー氏が、「中国に銀行口座があったのか」と尋ねると、トランプ氏は「それは2013年の話だ。2015年に銀行口座を閉じた」と答えていた。
しかし、トランプ前大統領は2015~17年の間、中国に銀行口座を持っていた事実が、納税記録から判明した。
今後の展開
トランプ前大統領は、20年米大統領選挙のテレビ討論会で、米国民に対して納税記録と全く異なる回答をしていた。
MAGA共和党が、ハンター氏のウクライナと中国ビジネスに関する調査を本格的に開始すれば、バイデン大統領と民主党は、トランプ前大統領のテレビ討論会の映像と納税記録を結びつけた政治広告を流して、カウンターパンチを打ってくるだろう。同大統領の「大嘘」を証明した効果的な政治広告になるに違いない。