沖縄と第12海兵沿岸連隊
従来、米海兵隊にとって沖縄は世界各地に展開するための拠点であった。海兵隊は沖縄からベトナム、クウェート、アフガニスタン、イラクなどの戦場に赴いた。しかし、台湾を巡る米中対立の最前線である沖縄に配備された第12海兵沿岸連隊にとっては、沖縄自体が戦場となる。
そして、中国に対するEABOを完遂するためには沖縄を守り、そこに踏みとどまらねばならない。したがって同連隊は、沖縄への向き合い方を従来の在沖縄海兵隊とは変えるべきだろう。
第12海兵沿岸連隊がまず取り組む必要があるのは、沖縄で戦い、沖縄を守るための下地作りである。具体的には①地域の人々、地方公共団体、自衛隊などとの信頼・協力関係構築、②法律、制度、地域の文化に対する理解、③地域の地形・地物の把握などである。なお、22年11月には米海兵隊員が与那国島において自衛隊との訓練を行っている他、在沖縄米海兵隊が最近、日本語を使った訓練を行ったとの報道もあり、こうした訓練は①を睨んだものと考えられる。
とはいえ、この取り組みも容易ではない。23年1月には沖縄県が在沖縄米海兵隊に対して、人道支援目的での訓練に際する下地島空港(宮古島市)の使用自粛を要請するなど、県と在沖縄米海兵隊との溝は深い。また、米海兵隊員による凶悪犯罪の記憶や普天間基地の辺野古への移転問題もあり、一般的には沖縄県民の米海兵隊に対する感情は良好とは言えない。
第12海兵沿岸連隊は中国に対する抑止力の一端を担うため、沖縄で戦い、沖縄を守れる態勢を構築することは喫緊の課題だ。そのためには、国はもちろん沖縄県内の自衛隊も同連隊の取り組みをサポートする必要がある。沖縄の人々や地方公共団体も、従来の在沖縄米海兵隊とは性格の大きく異なる同連隊との対話から始めてみてはどうだろうか。