2024年4月25日(木)

World Energy Watch

2023年1月26日

 昨年2月24日の戦争開始以降、ロシアが欧州連合諸国に売った化石燃料代金だけで、1年弱で20兆円に近い額だ。毎週5000億円の収入があれば、戦争継続も可能だろう。

 ロシアは化石燃料への投資削減を要求した環境活動家に感謝しているかもしれない。おかげで石炭、天然ガスの価格は高騰し、巨額の戦費を得ることができたのだから。

 グレタさんたち活動家はもっと化石燃料価格を上げたいのだろうか。1月19日、ダボス会議でのシンポジウムに出席した彼女は、化石燃料の新規事業を直ちに止めるように石油メジャー首脳に要求した。

化石燃料投資減少が招いた価格上昇

 欧州系石油メジャーは、風力発電設備、電気自動車の充電所など再生可能エネルギー(再エネ)関連事業への投資を増やしている。と言っても、投資の主流は依然として化石燃料生産関連だ。再エネに熱心とされるBPでも、投資の80%を油田、ガス田開発の上流部門に充てている(図-2)。

 米国の大手2社、エクソン・モービルとシェブロンの投資の主体は、依然として石油、天然ガス関連だ。例えば、エクソン・モービルの投資の内訳は図-3に示されているが、石油・ガスと化学部門以外への投資はほとんどない。

 欧州と米国で目指す方向に少し差はあるものの、依然として石油・ガス事業と関連する化学品が石油メジャーの収益と投資の大半を占めることに変わりはない。

 一方、脱炭素の圧力を受ける大手石油メジャー5社の累計投資額はコロナ禍の影響もあり減少を続けている(図-4)。経済の回復に伴うエネルギー需要増に応える生産ができず、化石燃料価格上昇の原因の一つになった。

温暖化問題の犠牲になる途上国の国民

 ダボス会議のシンポジウムに出席したグレタさんは、「利益のため化石燃料への投資を続けるのは、人をバスの前に投げ出すことだ」と非難し、グレタさんら活動家が署名した「地球を破壊する化石燃料の新規事業を直ちに中止することを要求する書簡」を、石油メジャーの最高経営責任者に送付したことを明らかにした。

 化石燃料価格の上昇により液化天然ガス(LNG)、石炭が購入できず計画停電の実施を強いられるパキスタンなどの国民は、バスの下敷きにされているとは活動家は思わないようだ。


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