2024年4月23日(火)

World Energy Watch

2023年1月26日

 温暖化については、はっきりしないことも多い。気温が上昇すれば影響はあるが、どの程度の経済的な影響がいつあるか予測は難しい。一方、脱炭素が一因となった化石燃料価格上昇は、今世界中の人たちに影響を与えている。石炭とLNG価格の上昇は日本の電気、都市ガス料金も大きく引き上げた。

 思いが温暖化にしか及ばない活動家の視野は狭すぎるのではないか。CO2削減により将来世代が受けるメリットは不透明だが、化石燃料価格上昇により全世界の人たちが、今受けるデメリットははっきりしている。特に化石燃料依存からの脱却に時間が必要な途上国は、大きな負担を強いられる。

化石燃料に依存する世界

 世界の一次エネルギーの約8割は、石油、石炭、天然ガスの化石燃料に依存している(図-5)。加えて、化石燃料は世界の発電量の6割以上を供給している。最も発電量が多いのは、石炭火力だ(図-6)。世界の電気の36%は石炭に依存している。

 活動家が要求する化石燃料の新規事業を直ちに止めると、やがて自動車も電車も動かなくなり、物流もなくなる。一日の大半は停電する。工場も商店も休業だ。肥料生産もできなくなり、食物にも影響が出る。

 ガソリン価格は、1リットル当たり1000円を超え、電気料金は1キロワット時当たり100円を超えるだろう。エネルギーを使わない産業はないので、すべての物価が上昇する。これが持続可能な社会とはとても思えない。

 途上国は世界のエネルギーの6割を使用している(図-7)。化石燃料の供給が減少すれば大きな影響を受ける。化石燃料は世界の人たちの生活と経済を支えている。

 欧州のエネルギー危機は活動家が目の敵にする石炭の消費まで増やしたが、それを是認したのは、活動家が頼りにする緑の党だった。

活動家と袂を分かち現実路線を取る独緑の党

 ドイツは、パイプラインで結ばれ依存度が高いロシア産天然ガス消費を抑制するため、石炭と褐炭による発電量を増やした(「脱炭素はどこへ?「血まみれの石炭」に手を染める欧州」)。

 ドイツでは18年に石炭生産がゼロになったので石炭を全量輸入している。褐炭の国内生産は続いており、隣接する発電所で使用している。褐炭は自然発火し易く輸送が難しい。褐炭火力の発電量を増やすためには隣接の炭鉱での生産量を増やすしかない。


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