グレタ・トゥーンベリさんは、2018年15歳の高校生の時に気候変動問題への対策を求めスウェーデン・ストックホルムの議事堂前で座り込みを始めたことで一躍注目を浴びた(「16歳の少女はノーベル平和賞に相応しいのか?」)。
毎週金曜日に学校ストライキと称し授業をボイコットのうえ座り込みを行ったことから、「未来のための金曜日運動」(Fridays for Future)として、世界中に広がった。日本でも19年2月から運動が行われている。
彼女は国連、欧州議会、欧州各国議会、世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)などでスピーチを行い、政治家、企業人を前に「気候変動問題に取り組まずお金のことばかり考えている」と非難することが多い。
彼女は1月15日からドイツの褐炭(品質が劣る石炭の一種)炭鉱での抗議活動に参加し、17日には警察に拘束されたことが世界中で報道された。その後、19日にスイスで開催された世界の指導者が集うダボス会議に参加し、化石燃料企業を非難したことがニュースになった。
気候変動対策を求める学生らのリーダーとされるグレタさんだが、彼女の行動は世界を貧困に追いやり、温暖化問題の悪化さえ引き起こしている。脱炭素が日本の発電コストの上昇につながり、東京電力などによる規制料金の値上げ申請にもつながった。
環境活動家は自らの行動が何を引き起こすのか考えているのだろうか。あまりに短絡的な思考形態で行動していないだろうか。
誰がロシアを助けたのか
グレタさんなどの環境活動家は、温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を排出する化石燃料を目の敵にしている。石炭がその筆頭だ。石炭を初め石油、天然ガスはそのうち利用されなくなるとの考えが広まったため、機関投資家も国際金融機関も将来収益を生まない「座礁資産」になる可能性の高い化石燃料関連設備への投融資を躊躇することになった。
その結果、コロナ禍からの回復に伴い化石燃料需要が増加したにもかかわらず、投資が減少したため生産は増えず、化石燃料価格の上昇を招いた(「途上国を停電と飢えに追いやる先進国の脱化石燃料」)。
その状況につけ込んだのがロシアだ。21年夏ごろから欧州向け天然ガス供給量を絞り始め価格上昇を引き起こしたが、ウクライナへの侵攻により、さらに価格が上昇することになった。
例えば、ドイツの石炭輸入価格の推移は図-1の通りだ。20年を通し1トン当たり100ユーロを超えることはなかったが、22年7月には420ユーロを超えた。