それだけではない。6月に予定される議会選挙・大統領選挙を前にして、HDPは解党させられ、その所属議員は選挙への出馬を禁じられることとなりそうな雲行きである。
エルドアンのAKPと極右のMHP(民族主義者行動党)の連合、および野党6党の連合の支持率はそれぞれ40%で拮抗しており、クルド票を基盤とするHDPの票(12%程度と見られている)がいずれに流れるかが選挙の帰趨を決定づける可能性が高い。
HDPの弾圧は、このような選挙情勢を睨んだものに違いない。HDPの弾圧はむしろCHP(共和人民党)率いる野党連合に有利に作用するのではないかとこの記事は指摘するが、HDPの票が組織的に野党連合に流れることを阻止することがAKPにとって利益と計算してのことであろう。
大統領選は決選投票にもつれ込むか?
こうした中、1月7日、HDPのブルダン委員長は独自に大統領候補を擁立する意向を表明した。これまで、HDPは野党連合の統一候補の支持に回ると見られていた。HDPが独自に候補を擁立することになれば、野党票を分裂させ、エルドアンに有利に働くであろう。少なくとも、50%を超える得票をする候補者はなく、決選投票となる可能性が高い。HDPの行動は野党連合に相手にされないこと(野党連合にはHDPを毛嫌いする中道右派のIYI<良好党>も含まれている)に対する腹いせのようでもある。
いずれにせよ、HDPが今後どう動くかははっきりしない。上記の記事にも言及があるが、エルドアンの陣営と取り引きして解党を免れる意図なのかも知れず、決選投票となれば、その段階で野党陣営の支持に回るということかも知れない。
状況は複雑で今後の展開はまだ分からないが、野党陣営の結束は強固とは言い難く、軋轢もあるようである。未だ大統領の統一候補を決めることができずにいるのは大きな問題のように思われる。