2024年4月24日(水)

新たな価値を生む「サードプレイス」の可能性

2023年2月3日

サードプレイスの持つ8つの特徴

 このように日本社会は今日、商店街がその存在意義を失いつつあり、かたや人口は減り続け、「ソロ社会」の高齢者をはじめ社会に孤独がはびこりつつある。こうした社会課題を解決する糸口として注目されている「サードプレイス」という概念である。

 これは、米国の都市社会学者、レイ・オルデンバーグが1989年に自著『THE GREAT GOOD PLADE」(邦訳『サードプレイス』)で提唱した概念である。家庭(第一の場所)でも職場や学校(第二の場所)でもなく、ストレスの多い現代社会においてリラックスできる居心地の良い第三の場所、それを「サードプレイス」と名づけた。

 1980年代当時の米国では、モータリゼーションとニュータウン開発によって郊外居住が進み、人々は住まいと職場を車で往復するだけとなっていた。ダウンタウンに立ち寄らないためにゴーストタウン化が進み、犯罪が多発するなど社会問題が噴出。オルデンバーグは、こうしたストレスの多い現代社会を生き抜くには、潤滑油の役割を果たす「とびきり居心地よい場所」が必要だと考えた。

 オルデンバーグはまちなかにあったカフェや居酒屋といったコミュニティの場の役割に着目し、そこに共通してみられる「サードプレイス」の定義として次の8点を挙げている。

① 中立性がある
自由に出入りでき、参加するために誰かの紹介は必要ではなく、誰かの要求で無理に滞在する必要もない。

② 社会的平等性が担保されている
社会的地位の高低や肩書のような縦の関係は存在せず、年齢や性別も関係なく「ありふれた一市民」であることが認められる。

③ 会話が中心に存在する
その場にいる人どうしの会話が重要視されるが、その内容は指摘や助言ではなく、その場を楽しむユーモアがある。

④ 近づきやすく親しみがある
自然と「今日も行きたい」と思える場所であり、ときとして安価あるいは無料の食べ物や飲み物が提供され、落ち着いて食事を楽しむことができる。

⑤ 常連がいる
心地よい時間を共有できる仲間としての「常連」がおり、強制されることのないゆるやかなつながりを楽しめる。

⑥ 目立たない場所にある
普段着で訪れられるような家庭的で目立たない場所にあり、いかなる個人やあらゆる階層をも受け入れる雰囲気がある。

⑦ 陽気な雰囲気がある
憎悪や緊張などはなく、常に陽気な雰囲気をウィットに富んだ談笑に満ち、誰でもリラックスして過ごすことができる。

⑧ 家から遠くない
自宅から徒歩圏内にあり、気軽に立ち寄ることができる。


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