災害で被災した地域だったり、「ふるさと納税」という形で見ず知らずの地域だったり、果てはアイドルまで、「消費」をすることで「応援」するという動きがある。この現象について『応援消費─社会を動かす力』(岩波新書)で分析した東京都立大学の水越康介教授に、「応援消費」が、どのように人々の行動や社会を変革する可能性があるのか聞いた。
「応援消費」という行動があること自体は、以前から意識していた。それは阪神淡路大震災、東日本大震災、そして、今回の新型コロナウイルスの流行においても見られた。私自身、コロナ禍で近所の料理屋に積極的に通った。
そもそも、消費というのは「自分のために買う」という行動だが、「他人のため」「生産者のため」に消費するというのは変わった行動であり、経済学的にはあまり注目していない分野だった。一方で、私の専門とするマーケティング論など商学の分野では、「商店街」のような、経済とまちづくりが合わさったようなテーマを研究するという特徴がもともとある。
昭和時代には、自分が住む地域にある商店街のお店で買いものをすることが当たり前だった。それは、意図せざる形で「応援消費」をしていたとも言える。それが大型のスーパーやショッピングモールが登場したことによって消えていった。ただし、すべてがなくなってしまったのではなく、商店街で見られた家族経営はコンビニエンスストアにも引き継がれた。「応援消費」という行動も、時代によって少しずつ形を変えていっている。
今年7月に拙著『応援消費』を出版したが、最初にアプローチをもらったのは、証券会社だった。これもまた、時代にアジャストした動きだといえる。ESG投資のように社会的責任が問われる場面が増えている。誰かのために消費する「応援消費」を、これからの新しい投資モデルを設計するにあたっての参考にしようとする試みだ。
いまや「応援消費」の一つになった「ふるさと納税」に対して、「地域振興であれば『寄付』でいいではないか」という批判がある。しかし、そもそも「寄付」という純粋な「贈与」は、社会の中で成立するのかという問題もある。同じく、純粋な「利他」などありえず、すべては「利己」につながるという見方もある。このように「正しいか」「正しくないか」ではなく、区分できない「何かがある」という問題意識が「応援消費」について調べてみようと思った動機にもなった。
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