2024年4月27日(土)

新たな価値を生む「サードプレイス」の可能性

2023年2月3日

 経済産業省「商業統計」によると、物販機能としての商店街の役割は減る一方である。小売業全体に占める商店街の年間販売額シェアは1979年の50%から、商業統計として最後の調査となる2014年には37%に下落。それから10年の間にはインターネット販売が急成長し、新型コロナウイルス感染症禍により消費者の購買局面はさらにバーチャルへとシフトした。商店街の衰退に拍車がかかっている。

減り続ける人口とソロ社会

 一方、商店街の顧客となるべき地域生活者にも大きな変化が見られる。明治維新以降急増していった人口が減少へと暗転したのは2010年。以来、急坂を下るように人口が減り続け、軌を一にするように少子化と高齢化が進んでいる。

 22年の出生数は前年比マイナス5.1%減の77万人程度と、初めて80万人を下回ると予想される。戦後数年間に生まれた「団塊の世代」の約3分の1という減少ぶりに、政府が「異次元の少子化対策」を打ち出したことも記憶に新しい。

 総人口に占める65歳以上人口の割合を示す高齢化率も、22年には29.1%に上昇している。総務省によると、42年に高齢者数は3935万人の最大値を数え、65年に高齢化率は38.4%に達して、国民の約2.6人に1人が高齢者となる社会が到来すると推計されている。

 もう一つ忘れてはならないのが「ソロ社会」の到来である。総務省によると、未婚率の増加や、核家族化の影響を受けて、単独世帯(世帯主が一人の世帯)が増加している。40年には単独世帯の割合は約40%に達すると予測され、とりわけ65歳以上の単独世帯数の増加が顕著だという。

 単独世帯の増加は、社会的孤立のリスクを高める。高齢者を対象とした内閣府の調査によると、わが国の単独世帯の高齢者のうち、他者との会話が「ほとんどない」と回答した人の割合は7.0%であり、これは二人以上の世帯の値(2.2%)や諸外国の単独世帯(米国:1.6%、ドイツ:3.7%、スウェーデン:1.7%)と比較すると高い水準であるという。単独世帯の増加は、頼りにできる存在が身近におらず、社会的に孤立してしまう人の増加にもつながると考えられる。

 彼らには「家庭」という夫婦・親子などが生活を共にする第一の場所(ファーストプレイス)もなければ、他者と協力として事業活動を行う「職場」という第二の場所(セカンドプレイス)も雇用の非正規化により関係性は希薄化している。人が人らしく生きるためには他者との交流が必要なことは言うまでもない。マズローの欲求5段階説によると、他者に関わりたい、集団に属したいという「所属と愛の欲求」は、「生理的欲求」「安全の欲求」に次いで人間の基本的欲求である。

 家庭や職場が変容するなか、人は人らしく生きるため第三の場所を求めはじめている。


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