ウクライナ支援と24年米大統領選挙の日程
ウクライナ支援は今後、次期米大統領選挙の日程と関係してくるとみてよい。ウクライナの運命は、ウクライナ国民が決めることだと考えているバイデン大統領だが、今後、非常に困難な決断に直面するかもしれない。
米大統領選挙は、今年夏までに民主・共和両党の大統領候補が出揃い、年内に各党内でテレビ討論会が行われる。その後、来年1~2月に党員集会および予備選挙が実施され、夏の全国党大会で民主・共和両党の正副大統領が指名される。一般に、米大統領選挙は「労働者の日(9月の第1月曜日)」を過ぎると本格化すると言われている。
通常であれば、9月と10月に民主・共和両党の大統領候補同士によるテレビ討論会が3回行われ、内1回が外交・安全保障問題がテーマになる。投開票日は24年11月5日である。
バイデン大統領が2月下旬ないし3月に出馬宣言を行ったとしよう。ロシアとウクライナの戦争の長期化は、24年大統領選挙でバイデン氏に不利に働くことは言うまでもない。ライバルの共和党大統領候補とMAGA系議員が、戦争を攻撃材料にするからだ。
仮に、戦争が24年9月までに終結していなければ、共和党大統領候補はテレビ討論会で、「多額の税金を使ったウクライナ支援は完全に失敗であった」と、バイデン大統領のウクライナ対応を厳しく非難して米国民にアピールする。
来年夏の共和党全国大会までに、戦争終結の目途がたっていなかった場合、同党の大統領候補は大統領指名受諾演説で、バイデン大統領のウクライナ対応のまずさを取りあげて、集中攻撃することは明らかだ。
ロシアによるウクライナの領土支配が、共和党予備選挙実施の直前まで続いていれば、バイデン大統領のリーダーシップ能力が問題視されることが予想される。欧米の連携が乱れると、結束を強調してきたバイデン氏のリーダーシップの欠如に焦点が当たる。
年内の共和党大統領候補によるテレビ討論会で、候補者がMAGA票の獲得を狙って、バイデン大統領にウクライナへの軍事支援の「打ち切り」ないし「見直し」を迫ることも充分あり得る。
いつ決断するのか?
米大統領選と同時に、下院選も行われ、全議席が改選される。共和党大統領候補に加えて、バイデン大統領は、ウクライナ支援反対を強く訴えるMAGA系議員からも圧力を受けることになる。
となると、ロシアとウクライナの戦争が長期化した場合、来年11月5日の投開票日前のどこかの時点で、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領に、ロシアとの「停戦交渉」に臨むように、水面下で圧力をかける必要が出てくる。バイデン大統領は、前述した大統領選挙の日程をにらみながら、その決断を下すのではないだろうか。いつがベストなタイミングだろうか。
もちろん、そのときのロシアとウクライナの戦争状態によるのだが、共和党予備選挙が始まる前に、停戦交渉に入るのが理想的だ。遅くとも、来年の「労働者の日」の前までに、停戦交渉が行われることが不可欠である。停戦交渉で進捗があれば、共和党大統領候補およびMAGA系議員からの攻撃をかわすことができるからだ。