2024年4月15日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年3月6日

Vladimir18/Gettyimages

 米ウォールストリート・ジャーナル紙モスクワ支局長のアン・シモンズらが、プーチンの年次教書を受け、 2月21日付の同紙に「プーチンが露米核兵器条約を停止する。ロシアの指導者はウクライナでの軍事作戦を継続すると誓う」という解説記事を書いている。その要旨は次の通り。

 2月21日、プーチンは年次教書演説で、米露間の最後に残った核兵器条約を停止し、ウクライナでの軍事作戦を継続すると誓った。

 新戦略兵器削減条約(新START)への参加停止のほかプーチンは、もし米国が最初にそうすれば新しい核兵器を実験する用意があると述べ、核実験の禁止の継続をも問題にした。

 年次教書でプーチンは戦闘で愛する人を失った家族への財政支援の増大を約束した。彼はロシアの経済は多くの西側諸国が予想したよりも回復力があったと述べ、戦争中ロシア人を助けるために社会的支援の拡大を約束した。

 プーチンは、米国とその欧州の同盟国がソ連の旧衛星国を欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)に引き寄せようとこの紛争を起こしたとの主張を繰り返し、西側に紛争の責任を負わせた。「この戦争を始めたのは彼らである。我々は戦争を止めるために武力行使をしている。西側はウクライナを、ロシアを叩く槌として使っている」と述べた。

 核兵器条約への参加を停止するプーチンの動きは、米露間の競争の新しい争点になるだろう。

 プーチンの演説は、ウクライナ作戦への国内支持を強化することを目指していたように見える。しかし侵攻兵力は強い抵抗に会い、初期に占領した領土の半分を失ってしまった。

 和平の話し合いは遠い。ウクライナはもっと西側の兵器をとアピールしており、一部のロシア人は昨秋の30 万の予備役動員の後、更なる動員があるのではと懸念している。

 紛争がひどくなる中、中国は紛争終結にもっと活動的な役割を果たしたいと言っている。西側諸国は、王毅外相によりミュンヘン安全保障会議で明らかにされた中国の考え方の概要に懐疑的になっている。2月22日、ウクライナのクレバ外相は、王毅と会って中国の計画の重要要素を聞いたが、ウクライナの領土の一体性尊重がその成功のための要石であると警告した、とNATO本部で述べた。

 北京にとって、もっと中立的な立場に公にシフトすることは意義深い変化になる、習近平とプーチンは戦争の前、冬のオリンピックの際に会い、米主導の世界秩序に挑戦し、友情に「制限」はないとの共同宣言を出した。以来北京はモスクワに、外交上の支持と西側制裁の中、経済的ライフラインを提供してきた。中国はロシアの石油・ガスを購入し軍事的に使えるマイクロチップや他の先進技術を売ってきた。

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 プーチンが年次教書で言っている新STARTへの参加停止が大きく報道されているが、新STARTは米露双方の利益に合致するものであって、プーチンがそれを破棄することはいわば自傷行為である。

 軍備管理合意がなくなれば、核軍拡競争になりかねないが、ロシアの経済力は国際通貨基金(IMF)統計では韓国以下であり、ロシアはその競争に勝てない。ロシア外務省は新STARTの重要規定は守るとしている。新STARTは2026年2月までは有効であり、その時までにはいろいろなことが起こりうるので、この段階で特に心配することはない。空虚な脅しの可能性が強い。


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