2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年5月11日

ASEANの姿勢から考える

 具体的に考えてみたい。日本にとって最も身近なグローバルサウスと言えば、やはり東南アジア諸国連合(ASEAN)をおいて外はない。

 そのASEANとの友好協力50周年を迎えるに当り、3月16日、国際交流基金の主催で国際協力のありかたを考えるシンポジウムが都内で開催されている。この集まりで聞かれたASEAN等の参加者の声を、「日本とASEAN、友好50周年で研究者議論 米中二択でない協調を」(朝日新聞電子版、3月17日付)が伝えている。

 基調演説に立ったインドネシアのマルティ・ナタレガワ元外相は、「国際社会の中で、日本とASEANが『安全な空間』を造り出し、地政学的な競争に縛られない関係性を築くことが望ましい」と語る。

 ベトナムから参加した地域戦略・政治研究者のレー・ホン・ヒエップは「中国は重要な輸入国、アメリカは重要な輸出国であり、双方と良い関係を維持したい。ベトナムにとって大切なのは、自立性の維持と法の支配による確立であり、日本が果たしている役割は大きい」と説く。

 そしてブルネイ・ダムサラーム大学歴史・国際関係学科アブディラー・ノー准教授は、「米国か中国かの二項対立だけだろうか。上下だけではなく、真ん中もある。中国封じ込めではなく、協力や包摂といった新たな関係性が必要だ」。「この二項対立から脱却するためにはインド太平洋を、世界中の国が利害を共有する国際公共財として見ていくべきだ」と述べた。

 ――以上から、ASEANは「中国封じ込め」の機能を担うものではなく、「米国か中国かの二項対立」に起因する「地政学的な競争に縛られない関係性」と「協力や包摂といった新たな関係性」を求めていることが指摘できる。これを域外大国からの影響・干渉を避け、ASEANとしての独自の振る舞いを目指す〝意思表示〟であり、ASEANとしての自覚と自信の現われと見なすべきだろう。

 日本にとって最も親しいはずのグローバルサウスからの声を、どのように受け取るべきか。

 G7の国際社会における地位・影響力の相対的低下という厳然たる事実を前にするなら、日本は対米関係にのみ軸足を置いた「いのしし武者の勇」のみならず、政治的・経済的存在感を50年前とは比較にならないほどに増したASEANとの関係を根本から見直し、再構築する道を選ぶべきだろう。遙か遠いアフリカまで出掛け、先行する中国のヒト・カネ・モノの網に足をすくわれる前に。

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