日本の弾薬状況と供給への〝障壁〟
日本の弾薬備蓄量に関し、かつて、米国のアーミテージ国防次官補(当時)は「自衛隊の弾薬備蓄は、3日から1週間しか持たない」(参議院質問第20号昭和60(1985)年1月22日より)と述べている。
そして2000年代に入り、第80回通常国会(2012年)の佐藤正久参議院議員の質問に対する答弁書には「陸・海・空自衛隊が保有する弾薬の総量は、平成20(08)年度末では約11万9000トン、平成21(09)年度末では約12万2000トン、平成22(10)年度末では約12万5000トンである」とある。155mm砲弾の重量を1発あたり50キログラム(kg)程度とした場合、08年度末の保有する弾薬が、全て陸上自衛隊の155mm砲弾であるすれば約24万発となる。ちなみに、米国がウクライナに提供した同種類の砲弾は1カ月当たり14万3000発が射耗されており、当時のわが国の2カ月分に及ばない。
一方で、これまでの状況を踏まえてか、22年12月に閣議決定された安保三文書では、「持続化・強靭化」を掲げ、この点で一歩踏み込んだ防衛力整備に言及しており、抑止力確保の点では望ましい。
台湾有事におけるわが国の防衛は島嶼部が主体となることが予想され、緒戦においては、榴弾砲などの従来火力ではなく、足の長い火力と、足の長い敵火力から防護する火力が中心となる。これは、「防衛力整備計画」(防衛省ホームページ 2022.12)において、長射程火力である「スタンド・オフ防衛能力」と、空からの敵火力を阻止する「統合防空ミサイル防衛能力」が重視されていることからも示唆されている(表参照)。
今回は「スタンド・オフ防衛能力」に絞って議論してみたい。巡航ミサイル「トマホーク」は米国調達、その他の誘導弾は純国産を予定している。トマホークに関しては、調達元が米国1カ所であり、ウクライナの状況を見ると、米国の政策判断に影響を受けるリスクがある。
純国産を担う防衛産業はどうであろうか。わが国は日米同盟下、専守防衛 の国是を保持してきた結果、国策を支援する防衛産業は、固有の特殊性を抱えながら今日に至っている。
武器輸出三原則により防衛装備品の移転は管理・制限されているため、防衛産業の顧客は防衛省のみ。よって平時の調達数は限定的で、最小限の資源投資により製造ラインをどうにか「維持」している可能性が高い。有事においては弾薬の緊急増産が必要となるが、現実に可能か、確認する必要がある。