2024年4月20日(土)

21世紀の安全保障論

2023年5月11日

 ロシアによる侵略に対するウクライナの兵站は、米国が旧西側諸国と連携して支えてきている。しかしここに来て、米国内では、自国の弾薬等の備蓄を鑑み、ウクライナの作戦支援、ひいては台湾の防衛力整備支援を懸念する声が高まってきている。

(Sergei Telenkov/gettyimages)

 この状況は、ウクライナや台湾のリスクであり、ひいては米国の同盟国であるわが国に対する警鐘ともいえる。本稿は、陸上部隊の弾薬備蓄や供給体制を見た上で、わが国の防衛全体に拡大した弾薬等の調達基盤を検討するものである。

顕在化した米国による弾薬等供給の不安定性

 戦略国際問題研究所(CSIS)国際安全保障プログラム上級顧問のマーク・カンシアン氏は、「米国在庫の再構築」(「米国在庫の再構築: 6 つの重要なシステム」(CSIS 2023.1.9))の中で、ウクライナ支援の米国防衛備蓄への影響について懸念する状況を指摘している (2023.1.9)。

 そしてCNNは、ジョセフ・ボレル欧州連合(EU)外交安全保障上級代表がウクライナの利用可能な弾薬の在庫が非常に少なくなっており、欧州はこの不足を早急に解決する必要があると伝えている(「ウクライナの利用可能な弾薬『非常に少ない』 EU外交トップが警告」(CNN 2023.2.20))。

 米国の弾薬の備蓄・供給に関して、NADIA ジュニア・フェローのクリス・ラウダティ氏が分析している(「The Precarious State of U.S. Defense Stockpiles (UPDATED)」National Defense Magazine 2022.11.18)。

 米国はウクライナに対して、備蓄在庫を取り崩し、155ミリメートル(mm)砲弾でいえば、これまで約100万発を支援してきた。同砲弾の生産量は月産3250発に過ぎず、米国は生産能力を2023年春頃までに2万発/月、さらに25年には4万発/月に増加させるとしているが、この増産によっても備蓄在庫の再構築には6年を要し、10万発/月を超える枯渇量の対処・回復にはならない。

 この状況は、携帯対戦車および対空誘導弾をはじめ、ウクライナに提供する全ての弾薬、そして高機動ロケット砲システム「ハイマース(HIMARS)」などの装備品も同傾向にあり、現在のウクライナ、そして防衛力整備が喫緊課題である台湾にとってリスクであるとしている。


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