今求められているのは、従来の国際経済秩序に加えて何が必要かであり、今までの国際秩序に代わる秩序を探すことではないだろう。サリバンは、市場の力をあまりに軽視している。政府が関心を持つ一部の問題に焦点を当て、それを選択的な政府の介入や投資で解決しようとするが、政府の力を過信しているのではないかなど、疑問は尽きない。
かつてバイデン陣営の「中間層のための外交」論が喧伝されたが、今や民主党左派の本音を見る思いがする。迷走する民主党の国際経済政策、暴走する共和党のポピュリズム、米国の直面する問題は深刻だ。もっと穏健で団結し、世界を強くリードする米国になることが望まれる。
1950年代への回帰を望む米民主党進歩派
ウォールストリート・ジャーナル紙コラムニストで米バード大学教授のラッセル・ミードは、5月1日付けの論説‘‘Progressives’ Want to Go Back to the 1950s’で、サリバンのブルッキングス演説について、米民主党進歩派は政府が経済を強く規制した1950年代への回帰を望んでいる、と批判している。
ミードは、①サリバンの新たなワシントン・コンセンサスは、民主党政治の三つの要素(労働組合、気候変動・再生エネルギー活動家、進歩派と民主社会主義者)を収束したものだ、②市場重視の民主党員や共和党員は、うまく機能する可能性の高い国内・国際経済政策を打ち出すべきだ、と主張する。核心を突いた良い論評である。
なお、対中経済関係については、4月20日にイエレン財務長官がジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)で行った演説が秀逸である。イエレンは、米国は安全保障と経済が衝突した際には常に前者を優先するが、米国は中国との健全な責任ある経済関係を求めていると述べ、米中関係の改善に向けた視座を提示し、中国に適切なメッセージを送っている。