2023年で最も重要な選挙とも言えるトルコ大統領選挙が5月14日に行われた。結果は、僅差で現職のエルドアン候補(49. 52%)が野党6党統一候補のクルチダルオール氏(44.88%)を上回ったが、いずれも過半数に達しなかったため、勝敗は28日の決選投票に持ち越されることとなった。
トルコ大統領選挙がこれだけ世界の注目を集めるのは、トルコが国際政治のキーファクターをいくつも握っているためだ。トルコが欧州、アジア、中東の結節点に位置するという地理的条件は、その不安定が即座に国際情勢全体に影響を与えかねないことを意味する。
ただ、トルコの重要性はそれだけではない。トルコとロシアの緊密な関係は、ロシアによるウクライナ侵攻の今後に影響を与えざるを得ず、スウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟は偏にトルコの意向にかかっているといっていい。
15年の欧州難民危機はひとまず小康状態にあるが、その大きな要因は、トルコ―欧州連合(EU)間の難民取扱いに関する合意によるし、シリア情勢もトルコが大きく関わっている。今、日米欧と中露は、それぞれグローバルサウスの取り込みに躍起だが、トルコはインド、ブラジルと並びグローバルサウスの代表格だ。
さらに、トルコは、ハンガリー、インド等と並び、権威主義体制の旗手とされるが、今回の選挙でその体制が存続するか交代するかは民主主義体制の強靭さを示す上でも重要な試金石となる。エルドアン体制がこのまま続くことになれば、世界の権威主義体制の勢いは更に増していこう。
エルドアン氏は03年以降の20年間、圧倒的な強さでトルコを支配してきた。その支配が揺らぐのではないかと思わせたのは今回が初めてだ。背景に何があるのか。