そのあたりは、もう少し詳細に選挙結果を分析してみないと詳しいことは分らないが、推測される限りでは、地方の保守層はエルドアン支持が高いが、世論調査は都市部に偏って実施されていること、全有権者の5%に相当する340万人の在外投票ではエルドアン氏が有利であること等が考えられる。
そもそもエルドアン氏にはイスラム教保守層という堅固な支持基盤があることを忘れるべきでない。エルドアン氏登場前、この層は支配層に十分顧みられることなく、成長の果実を手にすることがなかった。エルドアン氏は、この層に光を当てその生活基盤を引き上げていった。
エルドアン氏は、今でこそ強権主義の権化のように言われるが、政権発足当初はそうでなかった。インフラ整備に注力し、経済を成長軌道に乗せ果実を国民に均霑した。イスラム教保守層は、今でも、エルドアン氏の業績を高く評価する。
選挙不正は?すべては28日に決まる
そういうエルドアン氏が政治姿勢を転換したのは2010年代半ばころだ。13年のゲジ公園における大規模抗議デモと16年のクーデター未遂事件が強権体質への転換点となった。
以後、軍、官僚等で自分の意に沿わない者を次々とパージ、中銀、司法、メディアへの介入を繰り返していく。今ではエルドアン批判を口にすれば、即、お縄を覚悟しなければならないほどだ。
今回の選挙は公正に行われたか、との問題はある。エルドアン氏の選挙管理委員会(High Election Council)への介入は周知の事実だし、19年のイスタンブール市長選挙では、選挙の不正を主張、投票のやり直しを命じることもあった(ただし、再選挙でも結果は覆らなかった)。識者は、仮に選挙の不正があったとしても得票率の変動はごく僅かだろうと指摘する。
いずれにせよ決戦は5月28日に持ち越しとなった。世界はその行方を、固唾を飲んで見守っている。