2024年5月18日(土)

プーチンのロシア

2023年6月13日

ロシアの民主化は無いのか?

 本稿の筆者はこのサイトで度々、ロシアの民主化はあり得て、その場合、欧州からユーラシア全体が民主化し、それが専制中国を孤立化させると云う議論をしてきた。しかし今回の「ジェームズタウン研究所」の分析は「ロシアが公平な選挙等の民主主義的な制度を伴って民主化する」というケースではない。

 現在のロシアのシステムを前提にして、事態の改善を志向する姿勢だ。従って、例えばナワリヌイ氏やカラムルザ氏ら民主化運動の闘士たちが欧米的な議会制民主制度を目指して行動を開始することはもちろんあり得るが、ここでは議論の対象になっていない。

 しかし、このルージン博士の議論はロシアの民主化は可能であることを示唆している。いずれの候補者も高度の知的な蓄積を持ち、それぞれの分野で十分な国際経験を積み、実務能力が高い新しいロシアの指導者のイメージを具体的に描いている。多くが欧米の高等学術機関に留学している。 

 それに同博士がヨーロッパとの関係修復を展望しながら次の大統領候補を議論している点も重要だ。西側民主体制にとってはやっと遂に胸襟を開いて共同作業が可能なロシア人指導者が出てくる可能性がある。

 そこが非常に重要だ。透明性のある選挙制度などが構築され、システムとして民主化するのはその後に来る課題だろう。

 現代ロシアの政治風景は、プーチン大統領の西側民主体制への強い敵意、ほとんど米欧社会に復讐し、それを打倒したいといわんばかりの情念に埋没していると言える。ロシアの指導者がこういう執着から脱却したら、ロシアは全く新しい波に乗れる。

 その上、国家の管理能力が十分にあり、西側社会との関係改善に理解と熱意があり、ロシアの混乱は中国を利するという機微を理解しているなら、ロシアは歴史的な新しい一歩を踏み出すことになる。最も重要なことは若い有能な人材が列の向こうに多数いるということだ。

 もとより万事想定通り事は進まないだろう。プーチン支持派は簡単に引き下がらないだろう。だが、ロシアの議員たちが新体制を目指して声を挙げ始めた。

 おそらくはロシア人は長い苦難の後、新しい有能な指導者と共に前進するであろう。今度こそそう期待したい。

   
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