オンラインカジノにも触手
北朝鮮の暗号資産で、もう一つ忘れてならないのは、北朝鮮が行っているオンラインカジノのビシネスである。現在、北朝鮮国内でギャンブルを行うことは違法とされている。1990年代の金融危機の際にギャンブルを合法化することも検討されたが、依存症や犯罪に結びつくとの理由で最終的には却下された経緯がある。
その北朝鮮が外貨獲得のためにオンラインカジノを経営しているのである。韓国国家情報院による15年の報告では、121局に所属すると思われる約1100人の北朝鮮のコンピュータの専門家が、中国やマレーシア、その他アジア諸国などの国外で活動しており、その稼ぎは年間8億6600万ドルになるという。
この年間8億6600万ドルという額は、15年の推計であることからすると、すでにオンラインカジノの収益は、年間10億ドルを超えていると推計される。オンラインカジノの収益は暗号資産の窃取と違いコンスタントに入ってくる手堅いビジネスだ。
オンラインポーカーだけでも「BetOnline Poker」、「lgnition Poker」、「Everygame Poker」など複数あり、サイトを運営しているサーバーの所在地(ドメイン)は、ドイツ(.ag)や欧州連合(EU)(.eu)であり、北朝鮮が運営しているとは思えないサイトになっている。また、掛け金も今や暗号資産が主流となっているのである。
ちなみに日本では、オンラインカジノは違法とされているが、オンラインカジノの比較・紹介サイトであるグッドラックメイト社(GoodLuckMATE Ltd:マルタ共和国)が22年10月に発表した「日本のギャンブル統計とトレンドに関する調査報告」では、日本のオンラインカジノ市場が21年の67億ドルから27年までに101億ドルに成長すると予測している。このうちの何%が北朝鮮が運営するオンラインカジノに流れるかは不明だが、日本も間違いなく北朝鮮に貢献しているはずだ。
日本が奪取された暗号資産は7億2100万ドル
日本経済新聞と英エリプティック社による共同分析によると、北朝鮮によると思われる暗号資産窃盗被害総額は、17年以降の全世界で23億ドルなのに対して、日本はその約3割の7億2,100万ドルを占めているそうだ。ベトナム5億4000万ドル、米国4億9700万ドル、香港2億8100万ドル、韓国1億5800万ドルと、他国と比べても日本は最も高い数字を示している。
いま、まさに北朝鮮を支えているのは暗号資産だといえる。
連日のようにミサイルを発射し続ける北朝鮮。日本が北朝鮮のミサイル開発に貢献していると考えるとやるせない。日本が、北朝鮮のミサイル開発を推進するようなことがあってはならない。
金融庁や警察庁サイバー警察局には、これらの事実を重く受け止め、規制を強化するとともに、暗号資産取引所のセキュリティを強固なものにするよう指導を徹底するよう求めたい。また、オンラインギャンブルの取り締まりを徹底してもらいたいものだ。