慶應義塾大学名誉教授の阿川尚之氏は「検察は依然、自供に証拠の価値を見出そうとしているようだ」と指摘する。1948(昭和23)年に旧刑事訴訟法が改正されてから75年。いまだに「自白は証拠の王」という旧弊から脱却できないというのであれば、もはや度し難いというべきだろう。
大阪特捜部事件への空しい検事総長反省
検察の不正な捜査、立証では、2010年、大阪地検特捜部の証拠改ざん事件が記憶に新しい。
障害者団体と称するグループが、厚生労働省が発行する証明書を悪用して郵便料金の不正減免を受けていた事件で、起訴された厚労省局長の公判中に、主任検事が証拠のフロッピーディスクを改ざんしていた事実が発覚。主任検事のほか、上司の特捜部長、副部長が逮捕・起訴され主任検事に実刑判決、上司2人も猶予付き判決を受けた。
この事件から10年の節目だった20年、当時の検事総長、林真琴氏は「(事件を知った時)これから検察の根本を問われる時代になるんだろうなと暗い気持ちになった」と語った(朝日新聞DIGITAL、20年9月24日)。
林氏は「検察が独善に陥らないためにも、『刑事司法は検察官だけが支えているんだ』という意識が強くてはだめだ」と述べている。
それからでもすでに3年。林氏の言葉、いつになったら検察全体に浸透するのだろう。