2024年5月19日(日)

Wedge REPORT

2023年8月12日

 上図に見るように、ERAの輸送量は、21年までは順調に拡大していた。中国~欧州間貨物のトランジット輸送は、カザフスタン、ロシア、ベラルーシの鉄道会社に貴重なトランジット輸送収入をもたらしてきた。

 その一方で、中欧班列には課題もあった。まず、中国の対欧州連合(EU)貿易の輸出超過などに起因して、中国から欧州に向かう「西航」の需要に比べて、逆方向の「東航」の需要が低いという問題があった。便数では東航が西航を下回る状態が続き、東航ではしばしばコンテナが空の状態で運行された。また、中欧班列は中国各地の地方政府が補助金を供与することによって成り立っているという指摘もあった。

 それでも、中欧班列は中国、欧州、そしてトランジット国のそれぞれに恩恵をもたらしていることは間違いなく、一層の発展を遂げていくかに思われていた。

ウクライナ侵攻で環境激変
遠ざかるEU市場

 全てを台無しにさせたのが、22年2月24日にロシアがウクライナへの全面的軍事侵攻を開始したことだった。

 国有企業の中国国家鉄路集団の統計では、22年にも中欧班列の便数・貨物量は前年比で約9%増と、問題なく拡大を遂げたかのようである。ただ、これにはからくりがある。中国〜ロシア間の貨物も、中欧班列の実績に加えているからだ。22年にはロシアに対する西側諸国の経済制裁を受け中露貿易が拡大したので、中欧班列の輸送量増加もその効果が及んだものだった。それに対し、ロシアを除いた狭義の欧州と中国の間のコンテナ輸送量は、21年の61.8万TEUから、22年には38.6万TEUに低下した。

 ERAが発表した同社の輸送実績の動向も……(続きは下記リンク先より)

全文は『Wedge』2023年8月号に掲載されております。雑誌はアマゾン楽天ブックスでもご購入いただくことができます。試し読みはこちら

   
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Wedge 2023年8月号より
日本の少子化対策
日本の少子化対策

結婚・出産を望まないのは、若者・子育て世代のワガママであり、自分たちが選んでいること―。こう思う人がいるかもしれない。だが、経済情勢から雇用環境、価値観に至るまで、彼らを取り巻く「すべて」が、かつての時代と異なっている。少子化を反転させるため、岸田政権は異次元の少子化対策として経済支援の拡充を掲げるが、金額だけ次元の異なる政策を行っていても、少子化問題の解決にはつながらないだろう。もっと手前の段階でやるべきことがある。それは、若者や子育て世代の「本音」に耳を傾けることだ。


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