米国の本音とは
今回の和平会議に対する米国の受け止め方はどうか。バイデン政権は公式的には歓迎の姿勢を示してはいる。だが、「苦り切っているというのが本音」(アナリスト)ではないか。
なぜならウクライナ支援で西側をまとめ上げてきたイニシアチブが崩れかねないからだ。米国の思惑通りに進まなければ、議会などのウクライナ支援批判に火がついてしまう。
それでなくてもバイデン大統領にしてみれば、皇太子に言いたいことは山ほどある。バイデン氏は一時、石油増産という要求を拒んだ皇太子の〝裏切り〟に報復も検討したが、最終的には石油大国サウジとの戦略的な関係を考慮し、怒りを飲み込んだ。大統領としてはサウジがロシアに敵対し、中国との接近を抑え、イランと対立することを望んでいるが、これは虫のいい話だろう。
米政治が来年の大統領選挙に向かう中、大統領のサウジへの要求は2つ。1つはガソリン価格の上昇やインフレが選挙に悪影響を与えないよう、石油の増産を図ること。
2つ目は中東政治の大きな目玉であるイスラエルとの国交樹立だ。後者については外交政策で大きくアピールでき、ユダヤ系の得票につなげることが可能だ。
和平会議に出席したサリバン大統領補佐官が5月と7月に、6月にはブリンケン国務長官がサウジを訪問したが、最大の目的はイスラエルとの関係正常化を説得することだった。アラブ諸国はトランプ前政権時代、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、モロッコがイスラエルと国交を締結した。
アラブの盟主であるサウジがこの動きに同調すれば、中東の政治地図は一変する。米紙などによると、サウジ側はサリバン大統領補佐官らに対し、正常化の条件として、サウジとの安保協定締結、民生用核開発支援、パレスチナ国家の樹立などを逆提案したとされ、ハードルは高い。和平会議は6週間後に再び会合を開催する予定で、米国は会議を全面支援していくかどうかの決断を迫られそう。