2024年11月23日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年8月25日

 レアアースの主な産出国は中国58%、米国38%、ミャンマー12%、豪州7%(他、マダガスカル、インドなど)で、中国は多いにせよ、それほど突出してはいないし、この論説の筆者であるオクラホマ州知事が指摘するように、米国も相当産出している。それは、過去の中国の輸出制限措置の結果、他国における生産が活性化し、中国のシェアが落ちたからだ。2010年には中国は世界のレアアース生産の97%を占めていた。また、米欧により輸出制限措置が不当であると世界貿易機関(WTO)に持ち込まれて、敗訴している。

中国の市場支配力を弱める輸出規制

 そうした中、今回中国は再びガリウムとゲルマニウムの輸出制限措置(正確に言えば、軍事目的の輸出の免許制)を取った。ガリウムについて言えば、2022年の世界生産の98%は中国(540トン/550トン)である。実は、資源としては他国にも存在するがコストが高いので中国に頼っている側面が大きい。2022年の生産量では、韓国16トン、日本10トン、ロシア10トン、ウクライナ15トン、独、ハンガリー、カザフスタン合計で73トンと幅広い。他に、インド、ロシア、カナダなども産出できるようになるかもしれない。

 ゲルマニウムは熱に弱く、半導体原材料としては、シリコンに代替されている。また、埋蔵量では米国45%、中国41%と、米国の方が大きい。ただし、過去10年の生産では中国が世界の68.5%となっている。つまり、今回の輸出制限措置は、本論説のオクラホマ州知事のような提言を誘発し、中国の市場支配力を弱めることに繋がる。

 中国が今回のような措置に出たのは、やはり米国から高品質半導体製造機器を含む各種制限措置を矢継ぎ早に打たれて、「やられっぱなし」ではいられない、という国内政治的考慮が大きく、経済合理性には反していることを承知の上で、ある程度「強気」に出ざるを得ない、ということなのかもしれない。

 日本のレアアースにおける脆弱性は、レアアースの分布に比して対中輸入依存度が高いことだ。現在の輸入先は、中国58%、ベトナム14%、仏11%、マレーシア10%、その他8%である。これを、もう少し米国、豪州などに振り替えることはできるだろう。2022年6月には、このような問題意識を背景に、米国主導で日、英、豪、韓など12カ国からなる鉱物安全パートナーシップ(MSP)が創設されている。

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