米オクラホマ州のケヴィン・スティット知事が、7月16日付の英フィナンシャル・タイムズ紙掲載の論説‘A Mineral Strategy for American Security’において、米国内・海外の必須鉱物資源開発を促進すべく、手続き簡素化・減税措置、戦略備蓄創設などの政策導入を提案している。要旨は以下の通り。
中国が超大国になる野望には、希少鉱物資源(レアアース)供給の独占が必要である。米国は、この米国経済と安全保障にとっての脅威増大に注意を怠ってきた。ネオジム、リチウム、亜鉛などの化学物質は近代生活にとり必須だ。これらは、風力発電機、携帯電話、衛星、精密誘導兵器製造に使われる。このような必須鉱物の信頼できる供給への安全なアクセスなしには、米国経済は機能しない。
中国はこの供給をコントロールしようと活発に活動している。中国企業は、ジンバブエ、コンゴ民主共和国、チリ、アルゼンチンなどでこれらの鉱物の採掘免許を得ようとしており、より重要なことに、これらの鉱山に対する米国その他の国の採掘の機会をなくそうとしている。米中間の必須鉱物を巡る溝は危険なほど大きくなっており、軍民双方で供給網に脅威を与えようとしている。中国はこれらの必須鉱物の世界生産の60%、精錬の85%~90%、製造の75%以上を占めている。
良いニュースもある。米国と同盟国は中国に対抗するだけの必須鉱物を国内に有している。遠くを探す必要はない。オクラホマ州では最近、初の国産レアアース・磁石施設をスティルウォーターに開設した。
しかし、チャレンジも多い。環境保護団体の訴訟により、採掘と精錬のためのプロジェクトは過大な許可手続きに直面している。これは進捗を遅らせ、投資家の意欲を減退させる。
議会とバイデン政権は、希少鉱物における優越を優先事項にすべきだ。希少金属のプロジェクトが煩雑な事務手続きにより委縮させないよう、訴訟改革や州の手続き調整など、一層の改革が必要だ。同時に、民間の必須鉱物資源備蓄創設が必要だ。これにより対中依存を減らせると同時に、自前の必須鉱物資源産業が発展する。中国は既にガリウムとゲルマニウムの輸出制限を示唆し、米国産業を脆弱な地位に置いている。米国にとって必須な海外のプロジェクトへの投資を奨励するために作られた米国国際開発金融公社(DFC)は、国内外で必須鉱物資源の取得、開発、生産に対する民間投資のインセンティブを創設すべきだ。議会は、このような鉱物資源の採掘、開発、製造に対する税制優遇措置を創設すべきだ。
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レアアースは超電導や強磁性、触媒、高額、蛍光など、様々な特性があり、現代社会で必須のテレビ、電気自動車、携帯電話などの製造のために不可欠な小型モーターや小型電池の製造に欠くことのできない鉱物資源なのだが、実は、それほど「レア」ではなく、世界各地に幅広く存在している。ただし、それを鉱石から取り出すために有毒なものを含む化学薬品が必要になることから、その環境への影響にどれだけ配慮するかで製造コストが決まってくる。ゆえに、採掘による環境負荷や化学物質使用への制約が少ない中国が低コストで生産できている結果、現在の生産量や輸出量において相当多数を占めている。