2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年6月8日

 5月18日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、同紙アジア担当編集者のJoe Leahyが「習近平はロシアの影響力が弱まる中、中央アジアに言い寄る。中国主席は安全保障、貿易、エネルギーで重要な地域の指導者と2日間の首脳会議を開く」との解説記事を書いている。

(Pool / プール/gettyimages)

 習近平は伝統的にロシアが支配してきた中央アジアとの絆を強化するため、初めて対面の首脳会議を主催し、中国の影響力を強化している。ロシアが弱体化し、ウクライナ戦争で気を逸らされる中、5月18日から2日間のサミットは北京が5つの戦略的に重要な旧ソ連構成国である、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタンとのより強い経済的、政治的関係を推進する機会であった。

 日本が広島で主要7カ国首脳会議(G7サミット)を主催している最中、習は中央アジア諸国との首脳会談を強調している。中国はこの会合を西安で開催したが、そこからシルクロードが中央アジアを通って欧州に通じている。今年は広域経済圏構想「一帯一路」構想の立ち上げの10周年にも当たる。

 中国は中央アジアを政治的に微妙な新疆ウイグルの西部地域の安全保障にとり重要であると見ている。そこで中国はイスラム教徒のウイグル人を弾圧している。

 ロシアはウクライナ戦争を巡り、旧ソ連圏での影響力を失い始めた。ロシアは昨年、キルギスとタジキスタンの国境衝突の際にも存在感を示せなかった。カザフスタンはウクライナ侵攻を支持せず、ロシアのウクライナ領土の併合を認めることも拒否した。

 中国は中央アジアの天然ガスの最大の買い手である。特にカザフスタンはレアアース(希土類)の埋蔵地である。また中国はグリーンエネルギー、5Gネットワーク建設、道路鉄道拡張で地域を支援するかもしれない。もう一つの計画は鉄道だけで欧州に行ける41億ドルの鉄道を中国、キルギス、ウズベキスタンに建設する提案である。

 中国は、ロシアの軍事的プレゼンスをまねなくても、より大きな安全保障協力を発表するかもしれない。中国は既にタジキスタンと武装組織、武器、麻薬が新疆に入ることを阻止する協力をしている。習はこれを地域安全保障計画の提案にまで持っていこうとし得る。

 ただ、多くの中央アジア人は中国の意図に懐疑的で、中国への債務増大への懸念も持っている。ロシアは中央アジアにおいてまだ支配的で、多分より好まれている役者である。

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 習近平は、G7広島サミットと時期を合わせて、西安で中央アジア諸国5カ国(C5)の首脳会議を開催した。これについて、G7サミットに対抗する意図があるのではないかとの報道もあった。が、もしそういうことを中国が狙っていたとしても、G7首脳会議とC5首脳会議は参加者の重要性からしても比較の対象にもならないものである。特にG7拡大会合への参加者も勘案すれば、より明確にそうである。


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