〝対決姿勢〟のサウジ
UAEのスーダンへの軍事援助に対し、サウジは外交的手段での内戦終結を求めており、剛腕のムハンマド皇太子が苦り切っているのは間違いあるまい。何よりもメッカなどイスラムの2大聖地の守護者であり、アラブの盟主として君臨してきただけに、UAEのムハンマド大統領の「身の丈を超えた反サウジの振る舞い」(同)には我慢がならないといったところだろう。
最近明るみに出た事実として中東専門誌「ミドルイースト・アイ」が伝えたところによると、ムハンマド皇太子は昨年12月、サウジ人ジャーナリストに対するオフレコ会見で、UAEに対し「要求リスト」を突き付けたことを明らかにし、UAEがサウジを棄損し続けるなら、懲罰的な措置を取ると言明した。
具体的にはかつてカタールに対して行ったようにUAEを経済封鎖する可能性を示唆し、「カタールよりもキツイものになる」と恫喝した。さらに「UAEはわれわれを裏切った。彼らは私がすることを見ることになる」と警告した。UAEがこれまでに、皇太子の要求リストに応えたかどうかは明らかではない。
中東ではUAEのドバイが金融・商業の中心地で、外国企業が集結している。だが、サウジは2024年以降、地域の拠点をサウジ国内に移すよう外国企業に通知し、受け入れない企業とは事業契約を結ばないと一方的に宣言している。これもUAEつぶしの一環だ。
だが、これに対しては外国企業からすこぶる評判が悪い。「サウジは外国人のことが分かっていない。アルコールも娯楽もない場所に人は集まらない」(同)。ドバイはイスラムの国でありながら、限定的なバーやレストランでの飲酒は可能で、この寛容さも繁栄の大きな理由だ。
サウジはイスラムでも厳格な戒律を重んじるワッハーブ派の国。酒の提供は不可能で、サウジ移設を敬遠する外国人も多いだろう。サウジ対UAEの覇権争いに外国人も巻き込まれようとしている。