2024年12月8日(日)

教養としての中東情勢

2023年10月3日

 兄弟のように親密な関係だったサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)が石油政策やイエメン、スーダンなどの対外方針をめぐって対立が表面化し、中東情勢に新たな緊張が走っている。サウジを牛耳るムハンマド皇太子が「UAEに懲罰的な制裁を加える」と脅したとも伝えられるなど、石油大国同士の覇権争いで「ペルシャ湾は波高し」だ。

2021年12月にサウジアラビアのムハンマド皇太子を迎えるUAEのムハンマド大統領。2人の敵対関係が取りざたされている(Bandar Algaloud/Courtesy of Saudi Royal Court/ロイター/アフロ)

イエメン戦争から亀裂

 サウジとUAEはともに湾岸の君主国であり、6カ国で構成する「湾岸協力会議」(GCC)の主要メンバーだ。「アラブの春」で民主化の波が押し寄せた時も、2国は協力して体制を守り、対岸のイランの脅威にも対抗してきた。国力の大きさの違いからサウジが兄貴格で、UAEが弟分と見られてきたし、UAEのムハンマド大統領はサウジのムハンマド皇太子のメンター的存在とされてきた。

 この長い蜜月関係に亀裂が入ったのはイエメン戦争への対応を巡ってだ。UAEはサウジとともにイエメンに軍事介入。イランが後ろ盾の反政府勢力フーシ派攻撃に参戦したが、泥沼に引きずり込まれることを懸念して2019年、軍を一方的に撤退。その上、サウジの傀儡であるイエメン暫定政府に敵対した南部の「分離独立派」を援助したためムハンマド皇太子を激怒させた。

 こうしたサウジとUAEのぎくしゃくした関係がオープンな形で浮き彫りになったのが21年の「石油輸出国機構(OPEC)プラス」の会合の場だ。UAEはサウジが主導した石油生産割り当てに不満を表明。翌22年10月の会合では「サウジが減産への同意を強いている」と非難し、OPECからの脱退も辞さないとの強硬姿勢を見せた。


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